"35万円の空冷蔵庫" 第3話
「私、お料理全然駄目だから、お義母さんの筑煮が羨ましいです。どうやったらこんなに美しく作れるんですか?」
美穂がし褒めるだけで、母は嫌になった。
そして決まって弓へ言う。
「弓さん、ぼさっとしてないで美穂さんにお茶を入れて」
同じ嫁なのに、美穂は客。
弓は使用。
浩司も当然のようにそれを受け入れていた。
「兄貴のところは弓さんがのこと得なんだからいいじゃん。うちは美穂も忙しいんだよ」
美穂の仕事は週に2回ほどのパートだった。
それでも母は「美穂さんは働いているから」と庇い、弓には朝から晩まで働かせた。
今回の35万円も、そんな20の延線にあった。
弓は認めてもらいたかった。
母に度でいいから、
「さすが男の嫁ね」
と言ってもらいたかったのだ。
私は夜、ダイニングテーブルのに置かれていた冊のノートを見つけた。
表には弓の字で、
『お正準備ノート』
とかれていた。
何気なくき、私は言葉を失った。
『カニは浩司君が好きだから、番きいものを3杯』
『お義母さんは最歯がいと言っていたので、松阪牛は切りをお願いする』
『叔父さんは辛の本酒。好きだと言っていた銘柄を探す』
『おせちはお義父さんが好きだった黒豆のいもの』
献だけではなかった。
座席表。
み物。
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ひとりの好み。
予算。
何度も数字をき直しながら、どうすれば35万円以内で番いいものを揃えられるか考えた跡が残っていた。
私はノートを閉じた。
胸が苦しかった。
その、ソファで眠っていた弓のスマートフォンが振した。
画面には母からのLINE通が表示されていた。
本来なら、の携帯を見るべきではない。
だが送り主が母だと分かった瞬、私はを伸ばした。
『弓さん、さっきはご苦労様。カニもお肉も派で美穂さんもんでるわ』
続きがあった。
『の親戚の集まりは予定通りそっちのでお願いね。私たちは浩司のでゆっくりお祝いするから顔はさないわよ。親戚にはあなたが適当に言い訳して、もてなしておきなさい。それが男の嫁の勤めだからね』
私は画面を見つめた。
さらに、
『浩司の子供たちへのお玉3万円と、私への今の活費5万円。、浩司に取りにかせるから封筒に入れておいて』
と続いていた。
私は何度も読み返した。
材だけを奪う。
親戚の接待は弓へ丸投げする。
自分たちは浩司ので豪華な正を過ごす。
さらにまで取りに来る。
その、弓が目を覚ました。
「健さん……?」
私は迷った末、スマートフォンを渡した。
「弓。辛いとうけど、これを見てくれ」
弓は数読んだところできを止めた。
やがてからスマートフォンが滑り落ちた。
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「私……何のために頑張ってたんだろう」
その声は、泣き声よりも辛かった。
「私、お義母さんにいつか認めてもらえるって……本当の族になれるってってた。でも私って、ただの便利なだったのね」
そして初めて、弓は言った。
「健さん。私、もう頑張れない」
私は弓を抱きしめた。
「もう頑張らなくていい」
「……え?」
「男の嫁なんて言葉、今で終わりだ。おは俺の妻だ。それだけでいい」
その夜、私はあるへ話をかけた。
父の弟で、親族のでも特に発言力のある叔父だった。
私は今起きたことをすべて説した。
叔父はしばらく黙っていた。
やがてい声で言った。
「健。の会は予定通りやるんだな?」
「はい。ただし料理は、うどんだけです」
「分かった。親戚には私から伝える」
そして叔父は、しを置いて続けた。
「それと、5から預かっていたものを、持っていく」
私は息を止めた。
「父さんの……ですか?」
「ああ。正雄兄さんがぬ、私に託したものだ」
その瞬、5から私が追い続けてきた母と浩司のの流れが、本の線につながり始めた。
父・正雄がくなったのは5だった。
さな会社に定まで勤め、派な暮らしを好まず、若い頃からこつこつ貯を続けるだった。退職もあり、も分に受け取っていたため、私は母の老についてそれほど配していなかった。
だが葬儀が終わった直、母は泣きながら私へ言った。
「お父さん、株で失敗してたのよ。