"35万円の空冷蔵庫" 第2話
今ここでのまま母へ話をしても、弓がさらに傷つくだけだ。
「弓」
私は妻の肩を抱き寄せた。
「謝るな。おは何も悪くない」
その、私のスマートフォンが鳴った。
浩司からLINEが届いていた。
くと、1枚の写真が表示された。
弟ののきなテーブルいっぱいに、弓が何もかけて選んだタラバガニや松阪牛、おせちが並べられている。その奥で、母と浩司、美穂、子供たちが満面の笑みでピースをしていた。
文章はたっただった。
『兄貴、ごちそうさま。義姉さんに来もよろしくって伝えといて』
私は画面を握りしめた。
「健さん……どうしよう。親戚のみなさんが来るのに、何もないわ」
弓が震える声で言った。
私は空になった蔵庫の扉をゆっくり閉めた。
そして、はっきりと言った。
「の集まりは予定通りここでやる」
弓が顔をげた。
「でも……」
「奥の戸棚に、のお元でもらった乾麺のうどんが箱残っていたよな」
「あるけど、それだけじゃ……」
「それだけでいい」
私は弓の目を見た。
「麺箱だけでいい。残りの責任は俺が必ず取らせる。だけじゃない。今までおが流してきた涙の分まで、全部だ」
そのの私は、ようやく決めたのだ。
20、波をてたくないという理由で逃げ続けてきた自分自とも、決着をつけることを。
その夜、弓は何度も「ごめんなさい」
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と繰り返した。
私はに落ちていた発泡スチロールを拾い、割れた保材の袋を片づけながら、これまで見ないふりをしてきた20をい返していた。弓の荒れたを見れば、そのがどれほどかったのか嫌でも分かる。
私と弓が結婚したのは20だった。
弓はくに両親を病気でくし、親戚のを転々として育った。そのためか、「族」というものに倍い憧れを持っていた。
結婚が決まった、弓は笑って言った。
「これで私にも本当の族ができるんだね。お義母さんのことも、自分のお母さんみたいに切にしたい」
私はその言葉を聞いてしていた。
だが、母は最初から弓を娘として迎えるつもりなどなかった。
結婚の挨拶の、母は弓へこう言った。
「あんたは親の背を見て育ってないんだから、世の常識ってものが分からないでしょう。佐藤の男の嫁として、私がから教えてあげるから謝しなさい」
その、私は冗談だとった。
弓も笑って「よろしくお願いします」とをげた。
しかし、そこから始まったのは教育などではなかった。
盆。正。法事。親戚の集まり。
母は必ず弓を朝くから呼びつけ、台所へたせた。親戚が酒をみ、座敷で笑っているも、弓が腰をろすことはほとんどなかった。
「弓さん、お銚子が空いてるじゃない。
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気が利かないわね」
「煮物のがいわよ。本当に料理がね」
「お客様より先にお茶をむ嫁がどこにいるの?」
母はわざと親戚ので声をした。
厳しい姑として嫁をしつけている自分を見せたかったのだ。
私は何度か言った。
「母さん、その辺にしておけよ。弓だって休ませろ」
すると母は必ずった。
「健、あんた嫁の尻に敷かれて親をないがしろにする気? 本の男なのにけない」
私が反論すれば、そので弓への当たりがもっとくなる。
やがて弓自が私を止めるようになった。
「お願い、健さん。らないで。お義母さんの言う通り、私がもっと気を利かせればいいだけだから」
「でもな」
「族が揉める方が嫌なの」
弓にとって庭内に争いが起きることは、私が像する以に怖かったのだろう。
居所を失うこと。
族から追いされること。
幼い頃からそれを経験してきた弓は、理尽でもすれば族でいられるなら、その方を選んだ。
そして私は、その優しさに甘えた。
母がる。
弓がする。
が経てばそのは収まる。
私はそれを「平」だとい込んでいた。
本当は、妻だけを盾にして自分が逃げていただけだった。
母の態度がさらに酷くなったのは、10に浩司が美穂と結婚してからだった。
美穂の実は比較裕福で、彼女自も付きいがかった。
「お義母さん、この羊羹すごく名なおのなんですよ」
「まあ、美穂さんは本当に気が利くわね」