"十六歳の毒薬花嫁" 第11話
からのものは、残りませんでした」
庭が静まり返った。
さらに澄がへた。、族ので声を張ることのなかった女が、懐から冊の帳面を取りし、玄庵へ払った薬代を分すべて記録してあると告げた。役が計算すると、実際に購入された薬の価値に対して、支払い額はほぼ倍だった。
「私は分かっていながら黙っておりました」
澄は続けて古い借財証文を差しした。「これは、蔵が私の実の借を肩代わりした際の証文です。これを握られ、本の向きへをせば実を潰すと言われてきました」
蔵が歩踏みした。「義姉、その証文が表へれば本がどうなるか、お分かりですか」とく言った。以の澄なら、その言で目を伏せただろう。
しかし澄は真っ直ぐ蔵を見た。
「本が潰れても構いません。湊はきています」
その言で、庭の空気が変わった。
役はすぐに玄庵を呼びした。最初はらぬぜぬを通していた医者だったが、本物の帳簿の最に自分の名と額が記されていること、さらに薬商数の証言が致していることを告げられると、次第に顔を失った。
ついに玄庵は膝を折った。
蔵からを受け取っていたこと。
湊へ粗悪な薬をませ続け、症状が改善しないようにしていたこと。
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凛の薬で回復が始まったには、蔵の命令でい作用を持つ薬を使い、再び篤な状態へ戻したこと。
すべてを認めた。
「なぜと決めた」
役の問いに、玄庵は震える声で答えた。
「若主がくなるに、相続の話をまとめたいと蔵様が……。起きがられては困る、までに終わらせると言われました」
族の顔が変わった。
湊の「余命」は病が告げた期限ではなかった。
蔵が相続のために決めた期限だった。
庭のざわめきが収まらない、の方から乾いた音が聞こえた。杖がを叩く、い音だった。最初の音では誰も気づかなかったが、度、度と続くうちに、々の線がゆっくりへ集まった。
湊がっていた。
着物は肩で余り、頬もまだ痩せたままだった。には分な力が戻っておらず、歩むたび杖へ体を預けなければならない。それでも誰かに担がれることなく、自分ので庭へ入ってきた。
庭の央まで来るのにいがかかった。誰も急かさず、役さえを止めて待った。湊はようやく蔵のへつと、杖を握り直した。
「叔父。私はあなたを父のようにって育ちました」
声はきくなかった。それでも静まり返った庭では、端にいる者まで聞こえた。「病に伏してからも、叔父はを握って、治ったら緒にをて直そうと言ってくださった」
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と湊は続けた。
蔵は何も言わなかった。
「ですからつだけ、お聞きします。、私がまされていたものは何だったのですか」
い沈黙の末、蔵は目を閉じた。
「何でもなかった」
あまりにも軽い答えだった。
。
歩けなくなり。
べられなくなり。
歳の男が骨のようになるまでみ続けた薬を、この男は「何でもなかった」と言った。
湊はそれ以問い詰めなかった。鳴れば倒れてしまうほど体力が戻っていないこともあったが、何より、その答えだけで分だったのだろう。父のようにっていた男のに、自分が信じていたはもういない。
そこへ老の岩尾がちがった。祝言のに凛のなりを咎めた老は、枚の付を役へ差しし、「これは凛が本へ入る際、族ち会いのもと作った取り決めにございます」と言った。
「定めのまでに若主がより起きられぬ、嫁はをるものとする。定めのまでに若主がより起きられたなら、本の内向きと薬の入りは嫁に任せるものとする」
岩尾はから顔をげた。
「定めのは、本でございます。そして若主は、自らのでこの庭まで来られた」
老は凛の方へ向き直り、く腰を折った。
「本の嫁たる者を、見た目とまれで侮ったことを詫び申す」
凛は驚いてすぐをげた。
祝言のに交わしたやり取りを岩尾が覚えているとはっていなかった。