"十六歳の毒薬花嫁" 第7話
という噂までっていた。
さらに、族が再び座敷へ集められた。蔵は皆が揃ったのを確認すると、懐からさな箱を取りした。凛が取り返そうとしていた父の針箱だった。
「この箱の持ち主について、皆に話しておくことがある。凛、おの父親は吉というな」
座敷の空気が変わった。、藩へ納める薬へ偽物を混ぜた罪で捕らえられた男の名を覚えている者はく、族のからすぐざわめきが起きた。
蔵はゆっくり凛を見た。「罪の娘が、父を陥れたとっている野へ自ら嫁いできた。これだけでも理由は分ではないか。財産目当てではなくとも、みでこのへ入り込んだというなら、若旦へ薬をませたも分かる」
凛は唇を結んだ。父の無実を証するために来たことは事実だった。けれど、このでそれを認めれば蔵の筋きに自ら入ることになる。
「答えぬのか」
凛が黙ったことで、座敷の者たちはそれを肯定と受け取った。ついに澄がちがり、「湊がきている、このに置いてはおけません」とえ切った声で告げた。
「役所へ引き渡しなさい」
凛は顔をげた。「義母、あのの薬を作ったのは玄庵様です。私は庭におりました」と言ったが、澄は目を閉じた。玄庵はに通ってきた医者であり、嫁いで数の娘より信じられて当然だった。
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捕りを呼ぶ使いがるに、蔵は針箱を持って庭へた。凛も追いかけ、「それだけは返してください。父の形見です」と叫んだが、蔵は井戸のでち止まった。
「こういうものは、ない方がよい」
指がき、箱がへ当たるい音の、遅れてい音が響いた。凛は井戸へ駆け寄って覗き込んだが、黒い面に灯りが揺れるばかりで、箱はもう見えなかった。
その背で蔵が言った。
「おの父も、ちょうどおのようだった」
凛はゆっくり振り返った。
「父をごじなのですか」
「わしのへ来て、帳面のことはすべてっていると申した。だが、何も持っておらなんだ」
蔵は笑わなかった。その代わり、子供に世のの仕組みを教えるような静かな声で続けた。
「覚えておけ。この世は、っている者が勝つ所ではない。持っている者が勝つ所だ。だからおも、何も持たぬままこのをていく」
から捕りが入ってきた。凛はを縛られ、廊を通される途で、台所脇に座り込むキヌを見つけた。しい嫁の肩を持ったという理由だけで、キヌもその朝、野を追いされていた。
「凛様、私はまた何もできませんでした」
キヌは掛けで顔を覆った。凛はを止められないまま、それでも以台所で聞いた言葉をいして言った。
「キヌさん、蓋をしておけば匂いがこもるとおっしゃいましたね。
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だから、まだ遅くありません」
敷をる直、奥のから畳を擦るような音が聞こえた。凛はそちらへ顔を向けたが、声をせば湊を刺激すると分かっていたため、唇だけをかした。
「きていてください」
その夜、蔵は帳へで入った。分い帳面を冊取りし、囲炉裏のへ積みねる。あらかじめ数字をわせて作っておいた偽の帳面を棚へ戻し、本物を冊ずつへ入れようとした、背で戸がいた。
茂がっていた。
「父。その帳面を焼くおつもりですか」
蔵は何も答えなかった。茂はさらに歩入り、「兄にあの薬を使えと玄庵様へ命じたのも、父ですか」と尋ねた。自分はあの、玄庵が父の帳からてくるのを見た、違うなら言だけでも違うと言ってほしいと訴えた。
蔵は息子の問いには答えず、「このの主になるが来れば、そのすべて分かる」と言った。茂はい父を見つめた、首を横へ振った。
「私は、そんなの主にはなりたくありません」
茂は部をた。
そして、夜がけるにもう度戻ってきた。
蔵が眠っているに帳面をすべて持ちし、へ隠した。代わりに積んでおいたのは、父がのために作らせていたもう組の偽帳簿だった。
翌朝。
蔵は偽物を冊ずつへ投げ込んだ。
墨が焦げ、がになるまでそのをれず、最にひどくれやかな顔をして呟いた。