"銀行にいた偽妻" 第6話
担当医として記載された名にも見覚えがない。
「偽物……」
から診断が落ちた。
に散らばった契約のへ、いが滑り落ちる。
夫の目が、気に輪郭を持った。
ただ財産を移すだけではない。
かよ子自を「判断能力のした」に仕てようとしている。
もし自分が夫の正を訴えても、周囲から「認症の妻のい込み」と扱われるように。
そう考えた瞬、最の来事が次々に蘇った。
息子夫婦が訪ねてきた。
剣は事、笑いながら言った。
「母さん、最物忘れがいんだよ」
「そんなことないわよ」
かよ子が否定すると、剣は優しく肩へを置いた。
「ほら、またを張る。無理しなくていいんだ」
その、息子がし配そうに母を見ていた。
親戚の集まりでも同じだった。
「うちのかよ子は最、しい込みがくなってね。自分で言ったことを忘れて、言ってないって言い張ることがあるんだ」
冗談のように笑っていた。
かよ子自も、「だから仕方ないわね」と笑って受け流した。
全部、準備だったのだ。
いつか妻が何を訴えても、誰も信用しないように。
さらに別の記憶が蘇った。
「その、し老けて見えるな」
「髪はもうしくしたらどうだ」
「この雑誌のみたいなじが似うんじゃないか」
剣はここ数、かよ子の装や髪型へ以よりをすようになっていた。
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かよ子は、夫がまだ自分を女性として見てくれているのだとし嬉しくっていた。
だがで見た女は、その変化を全て取り入れていた。
かよ子がしいを着れば、女も同じを着る。
髪を切れば、女も同じ形へえる。
自分の活そのものが、あの女を完成させるための資料にされていたのかもしれない。
恐怖が込みげた。
自分は連れ添った男にとって、妻ではなく、模倣すべきデータだったのか。
古くなれば置き換えられるだったのか。
かよ子はへ座り込み、しばらくけなかった。
涙はなかった。
あまりのことに、が追いつかなかった。
やがて、ゆっくりと診断を拾いげた。
の端がのひらへい込む。
そのさな痛みで、識が戻った。
今夜、剣から話が来るだろう。
阪へ張している夫として。
何事もなかったような声で。
かよ子はちがった。
「いいでしょう」
さく呟いた。
「あなたが望むなら、演じてあげる」
何もらない妻。
し物忘れが始まった妻。
夫の言葉を疑わない妻。
最の演技をしてみせる。
そして、剣が完全にした瞬に、この脚本をひっくり返す。
かよ子は偽造診断と審な契約をスマートフォンで何枚も撮した。
その、類を枚ずつ元の位置へ戻した。
自分がここへ入った痕跡を残してはいけない。
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全てを元通りにえた、かよ子は古いアドレス帳を取りした。
そこに、い連絡していない名があった。
田里美。
学代の友。
今は弁護士として働いている。
かよ子は迷わず番号を押した。
翌、かよ子は都のホテルラウンジで田里美と向かいっていた。
何も会っていなかったが、里美の面は昔と変わらなかった。話を聞くは懐かしそうに笑っていた彼女も、の件から偽造診断まで説を受けるにつれ、表を失っていった。
「かよ子、これはただの浮気や婚問題じゃないわ」
全てを聞き終えた里美は、い声で言った。
「詐欺や文偽造に発展する能性がある。あなたの財産だけではなく、本としてのそのものを奪おうとしているなら、非常に危険よ」
「私も、昨までは信じられなかった」
「剣さんに話した?」
「いいえ」
里美はすぐに頷いた。
「それで正解。今は絶対に気づかれないで」
「やっぱり?」
「相がここまで準備しているなら、証拠を隠すくらい簡単にするでしょう。偽の診断まで用しているなら、あなたが騒ぎ始めたに、それを逆に利用する能性だってある」
かよ子の背筋にたいものがった。
「つまり、本当に私を認症だと言い張る?」
「ええ。だから今はかぬ証拠を集めること。に問い詰めるのが番危険よ」
里美はテーブル越しに、かよ子のを軽く握った。
「今まで通りにして。