"欠陥品と呼ばれた歌姫" 第10話
投稿には《事があって幼い娘と引きされました》《元夫と姉に娘を奪われ、会わせてもらえませんでした》《真実を娘へ伝えたい》といった文章が並んでいた。美容で私たちと再会した翌から投稿を始めており、あたかも13ずっと娘を探していた母親であるかのように自分を演していた。
「何これ」
良も画面を見た。
也が「見なくていい」と携帯を引こうとしたが、良は首を振った。
「私のことだから見る」
投稿の反応は最初こそなかったが、「名シンガーの実母」という肩きが広がるにつれ、しずつが集まり始めていた。《》《娘さんも本当のお母さんに会うべき》《名になった途端に隠されたのでは》といったコメントまでついている。
そして、数には週刊誌系のネット媒体から也の仕事用メールへ問いわせが来た。
《AIRAさんの実母を名乗る女性より、幼期の親権に関して報提供を受けています。事実確認のためコメントをいただけますでしょうか》
也はメールを読み終えると、く息を吐いた。
「ここまでやるか」
私も腹がった。娘を捨てたこと以に、その娘が名になり始めた途端、自分の活をて直す材料として利用しようとしていることが許せなかった。
良だけは、なほど落ち着いていた。
広告
「ママ」
「何?」
「置き、まだある?」
私は瞬、答えられなかった。
恵が13に残したは、也が婚関係の類と緒に保管していた。良には母親が自らていったことは話したが、《いらない》《どっかおかしい》とかれていた部分までは見せていない。
「あるよ」
「見せて」
「良」
「もう17歳だから」
娘はまっすぐ私を見た。
「全部りたい」
その夜、也は類箱の奥から古い封筒を取りした。
13ぶりにかれた便箋は、端がし黄ばんでいた。
良は文字ずつゆっくり読んだ。途で度だけ唇をく結んだが、最まで目をそらさなかった。
「これ」
を机へ置く。
「私のこと、いらないっていてあるね」
私は何も言えなかった。
「ごめん」
なぜか、私が謝っていた。
良はし驚いた顔をした。
「何でママが謝るの?」
「こんなの読ませたくなかった」
「でも、ママがいたんじゃないじゃん」
良は便箋をもう度見た。
「取っておいてくれてありがとう」
也が、「これをネットへす必はないからな」とを押した。恵の嘘を瞬で崩すには分な証拠だったが、娘自の傷まで世へ晒すことになる。
「分かってる」
良は頷いた。
「ネットで喧嘩なんかしないよ」
「じゃあどうする?」
良はし考えた。
「にする」
その言葉に、私と也は同に顔をげた。
良はそのから、夕になると也の仕事部へこもるようになった。
広告
机のには学のノートと用のメモが並び、何度もいては消し、言葉を選んでいた。也は最初、「今はがすぎるから、し置いた方がいい」と止めたが、良は「ってるにしたいわけじゃない」と答えた。
曲の仮タイトルは《母》だった。
その題名を聞いた、私は胸の奥がざわついた。
「私のこと?」
ある晩、勇気をして尋ねると、良は笑った。
「半分」
「残り半分は?」
「産んでくれた」
私は何とも言えない顔をしていたのだろう。良はすぐに「責めるじゃないよ」と説してくれた。
には、恵の名も置きりという言葉もてこない。妊、失踪、欠陥品といった直接な言葉も使わず、《私をんだと、私を育てたは違う》《どちらも私の始まりだけれど、帰る所を教えてくれたのはつだけ》という、静かな内容になっていた。
也がピアノをにした曲をつけた。
最初のデモを聴いた良は、しばらく黙ったあと首を横に振った。
「最、もうしるくしたい」
「何で?」
「私、じゃないから」
私はその言葉を聞き、目がくなった。
良は確かに度、産みの母親に置いていかれた。けれど、その13ずっと幸だったわけではない。也に守られ、私と暮らし、学へ通い、友を作り、好きなをってきた。
「私さ」
録音の休憩、良が突然言った。
「さい頃、しゃべれなかったんじゃなくて、しゃべるの怖かったんだとう」
也のが止まった。