"欠陥品と呼ばれた歌姫" 第1話
42歳になった今でも、病院特の消毒液の匂いを嗅ぐと、私は25歳だった頃のことをいす。あの頃の私は結婚を約束していた男性がいて、し古い柄の男だった彼との未来を、ごく普通にい描いていた。ところが婚約が決まった直、彼の母親から「うちは跡取りが必だから」と言われ、半ば制される形でブライダルチェックを受けることになった。
結果は、自然妊娠の能性が般な女性よりいというものだった。医師は「妊娠できないというではありません」と何度も説してくれたが、彼の母親にとっては、その文だけで分だったらしい。検査から1週、彼は喫茶で俯いたまま、「母さんがどうしても納得しなくて」と婚約解消を申した。
私はそのでは泣かなかった。「そう」とだけ答え、婚約指輪をテーブルへ置いてをたものの、へ帰って玄関の鍵を閉めた途端、膝から力が抜けた。好きだったに捨てられたことも苦しかったが、それ以に、自分のに「女性として欠けている」という判定を押されたような気がしたのだ。
数、4歳の妹・恵が実へ顔をした。私が婚約を解消されたことは父から聞いたらしく、慰めるでもなく、蔵庫から勝にジュースをしながら「お姉ちゃん、子ども産めないんだって?」
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と楽しそうに聞いてきた。私は「産めないって決まったわけじゃない」と答えたが、恵はで笑った。
「でも難しいんでしょ? かわいそ。私だったら、女にまれたなくなったみたいで無理かも」
昔から、妹はそういう子だった。私が試験でいい点を取れば「勉しかできない」、母に褒められれば「だからがかからないだけ」と言い、自分が私よりである理由を必ず探した。子どもの頃はそれを単なる負けず嫌いだとっていたが、になってからは、をげないと自分を保てないところがあるのだと気づいていた。
そのも、恵は私が番触れられたくない所を見つけると、ためらいなく指を入れてきた。そしてしを置いたあと、得げに自分のお腹へを当てた。
「ちなみに私、妊娠したよ」
私はわず妹の顔を見た。恵は21歳で、カフェや居酒のアルバイトを転々としながら、夜になるとライブハウスへ入り浸る活をしていた。相はそこでりった3歳のベーシストで、名を也といい、恵は以から「そのうち絶対売れる」「私、芸能の奥さんになるかも」と周囲へ自していた。
「結婚するの?」
「するよ。だって赤ちゃんいるし」
恵は何のもない顔で笑った。「お姉ちゃんができなかったこと、私が先に全部やっちゃうね」とまで言われたには腹がったが、私は反論しなかった。
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妹の幸せを妬んでいるとわれるのも嫌だったし、それ以に、無計画なが本当に子どもを育てられるのかという配の方がきかった。
その頃、母はすでにい闘病活に入っていた。恵の妊娠を聞いた母は病のベッドで々しく笑い、「赤ちゃんがまれるまで頑張りたいね」と言ったが、その願いは叶わなかった。初孫がまれる3ヶ、母は私と恵と父に見守られながら静かにくなった。
母のは、族の形を気に変えた。父はもともと無なだったが、母がいなくなるとますますので話さなくなり、私も恵も実へく回数が減った。翌、父がの紹介でりった女性との再婚を決めた、私は寂しさから逃げたかったのだろうとったものの、しい妻を「お母さん」と呼ぶ気にはなれなかった。
やがて、恵は女の子を産んだ。名は良――アイラと読むのだと聞いた、正直、私なら選ばない名だとったが、病院でさな赤ん坊を抱いた瞬、そんなことはどうでもよくなった。いまつ毛を伏せて眠るその子を見ながら、私はので「どうかこの子だけは、誰かと比べられずに育って」と願った。
その願いが、13の私のそのものになるとは、そのはまだ像もしていなかった。
良がまれても、恵の活はほとんど変わらなかった。
赤ん坊が夜泣きをすれば「也、お願い」