"捨てられた夏の肖像" 第5話
「こんなもの客にしておいて、交換だけで済むとってるのか!」
その声を聞いた瞬。
が止まった。
10経っていた。
しくなり、荒っぽさも増していた。
それでも。
忘れるはずがなかった。
だった。
私は混みの隙から、鳴り声の方向を見た。テーブルのにはと澄がち、若い男性員へ詰め寄っている。そのしろには、学くらいの女の子が俯いたままっていた。
胸がく鳴った。
髪は肩よりしく伸びていた。
顔ちはに似ている。
けれど。
目元。
泣くのを堪えるのの結び方。
幼い頃のままだった。
だった。
私は10、写真のでしか成させることのできなかった娘を、初めて現実の姿で見た。駆け寄りたい気持ちと、突然声をかけて混乱させてはいけないという理性がぶつかり、体がかなかった。隣にいたは私の異変に気づき、「ママ、どうしたの?」とさく尋ねた。
のテーブルには、半分ほどべ終えた料理が置かれていた。その皿を指さしながら、は「虫が入っていた」と主張し、澄は「こんなには円も払わない」と員へってかかっている。さらには事代の免除だけではなく、が汚れた、気分が悪くなったなどと言い、慰謝料のようなまで求していた。
員は困り果てていた。
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そのろで。
だけが泣いていた。
私は娘の装を見て、違を覚えた。袖はらかにく、スニーカーの踵も擦り減っていたうえ、髪もい美容院へっていないように揃いだった。と澄はそれなりにったを着ているのに、だけが成した体にわないを着ていた。
その、隣のテーブルにいた若い女性がちがった。
「あの……私、さっきから見てました」
が睨みつける。
女性は瞬怯んだものの、スマートフォンを握り直した。
「その虫、最初から入っていたんじゃありません。そちらのおばあさんが、自分で料理に入れていました」
周囲がざわついた。
澄の表が変わった。
「何言ってるのよ! 証拠でもあるの?」
女性は黙ってスマートフォンを操作した。どうやらの態度が最初から自然だったため、途から画を撮っていたらしい。画面には、澄が周囲を確認しながらさな包みから何かを取りし、皿のへ落とす面がはっきり映っていた。
「勝に撮するなんて、プライバシーの侵害よ!」
澄は逆したが、周囲の線は気にたくなった。も「こんな映像じゃ何の証拠にもならない」と鳴り、らしい男性まで呼びつけて騒ぎ始めた。私は10と同じだったの姿を見て、妙に静になっていく自分をじた。
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その。
ずっと黙っていたが。
突然へた。
「ごめんなさい」
澄が振り返った。
は涙を拭かずに、員へをげた。
「おは悪くありません。おばあちゃんが入れました。をるに虫をさい袋に入れているのも見ました。お父さんもってました」
フードコートが静まり返った。
「! 何を言ってる!」
が娘の腕を掴もうとしたため、私は無識に歩へていた。しかしは父親から逃げるようにを引き、顔をげた。
その線が。
私とぶつかった。
数秒。
はかなかった。
私も。
けなかった。
10。
2歳だった子供。
覚えているはずがない。
そうった。
ところが。
の唇が震えた。
「……ママ?」
その言で。
10張り詰めていたものが。
全部。
崩れた。
は私のところへってきた。途で子にぶつかりそうになりながら、それでも止まらず、私の胸へび込んできた。私は反射に娘の背へ腕を回し、10度もできなかった抱擁をようやく現実のものにした。
「ママ……ママ……」
は何度も同じ言葉を繰り返した。私は何を言えばいいのか分からず、「、ごめんね」としか答えられなかったが、その言葉をにした瞬、自分でも驚くほど涙が溢れた。周囲のたちが見ていることなど、もうどうでもよかった。
隣でが呆然と私たちを見ていた。
彼女には幼い頃から姉がいることを話していたが、実際に会ったことは度もない。はし迷ったあと、泣きじゃくるのそばへづき、何も言わず背を撫でた。