"ママ卒業の代償" 第7話
「学へったらママががっかりするって言ってるの」
健太郎が顔をげる。
「何だって?」
「ひなは学が嫌いだったんじゃない。ママを困らせるのが怖かったみたい」
「そんな……」
健太郎は青ざめた。
しばらくして、ぽつりと言った。
「実はさ」
「何?」
「最、美奈子が『自分のカフェを持ちたい』とか言ってる」
夫が眉をひそめた。
「カフェ?」
「それだけじゃない。主婦向けの講座をくとか、自己プロデュースの仕事をするとか」
「体いつそんな話に?」
「俺にも分からない」
健太郎はを掻いた。
「ひなのことはどうするんだって聞いたんだよ。そしたら、『ひなも今楽しそうだし、このままお父さんとお母さんに預けるのもありかもね』って」
私はを疑った。
「ありかもね?」
「そう」
「自分の娘よ?」
夫も呆れていた。
「次は『娘を義両親に奪われたかわいそうな私』で記をくんじゃないだろうな」
冗談のような言い方だった。
でも誰も笑えなかった。
健太郎が両で顔を覆った。
「子育てで褒められなくなったら、今度はを追う女か……」
声に疲れが滲んでいた。
「結局、からどう見られるかなんだよな」
私はしだけ、美奈子さんがそうなった理由を考えた。
美で、仕事ができた。
独代は周囲から注目されることもかったのだろう。
結婚し、母親になった。
いつしか誰からも、
「美奈子さん」
ではなく、
「ひなちゃんのママ」
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と呼ばれるようになった。
もしかしたら、それが耐えられなかったのかもしれない。
でもそれは私の像に過ぎない。
どんな理由があろうと、ひなを傷つけていい理由にはならない。
健太郎がさく言った。
「俺が悪かったのかな」
「何が?」
「もっと美奈子のこと考えてやればよかったのかもしれない」
肩を落とした。
「結婚してからデートも減ったし、プレゼントも昔ほどしてないし」
そこで夫の声がんだ。
「健太郎」
「何だよ」
「おは働いて族を養ってきた。美奈子さんだって庭を支えてきた。それぞれやることがある」
「……」
「親になったのに、いつまでも独の頃とまったく同じなんて無理に決まってるだろう」
いかにも夫らしい言い方だった。
私はし柔らかく続けた。
「夫婦の問題については、2で話しえばいいとう。でもね」
健太郎を見る。
「ひなのことだけは別よ」
息子の顔が引き締まる。
「どんな理由があっても、子供を自分が褒められるための具にしていいわけがない」
「分かってる」
「本当に?」
「分かってるよ」
健太郎はく息を吐いた。
「ちゃんと美奈子と話す」
「ひなのことを1番に考えて」
「もちろんだ」
力く答えた。
私たちは、ひとまず息子に任せることにした。
ところが数。
がのポストに1通の封筒が届いた。
宛名は、
『お義父様、お義母様へ』
差は、美奈子さんだった。
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「何かしら」
私は封筒を持ちながら、嫌な予がした。
夫が横から受け取った。
「妙にいな」
慎にける。
からてきたのは、。
そして妙に華やかなチラシだった。
私は先にチラシを読んだ。
そこにはきな文字で、
『今からでも遅くない。私らしく輝くための第1歩』
といてある。
その。
『30代から始める自己プロデュースセミナー』
『主婦から自した女性へ。を変えるワークショップ催』
「何よ、これ」
わず声がた。
チラシの央には、マグカップを片に微笑む美奈子さんの写真。
いかにも雑誌の表のような決め顔だった。
『ママから“私”へ。歩踏みすあなたを応援します』
私はしばらく言葉がなかった。
「誰が応援されるのよ」
夫が吹きしそうになったが、をいた途端、笑みが消えた。
「とも子。こっちもすごいぞ」
私は受け取った。
そこには丁寧な字で、こうかれていた。
『これからのを見つめ直し、“ママ”という役割を卒業して、自したの女性として再スタートを切ろうといます』
私は度止まった。
もう度読む。
『ひなはお父様とお母様のもとでのびのびと過ごしているようなので、今もどうぞよろしくお願いいたします』
「卒業?」
声が裏返った。
「何を勝に卒業してるのよ!」
ちがりそうになった私の肩を、夫が押さえた。
「まあまあ」
「まあまあじゃないわよ」
「分かってる。俺だって腹ってる」
そう言いながら、夫の肩がし震えていた。
「笑ってるでしょう!」