"青いチョーク" 第2話
私には何の縁もない学だった。美紀が通った学とは学区が違うし、私自は結婚するまでこの町にんでいなかった。それでも、何となく見てみたくなった。
舎の半分はすでにい事用シートで覆われていた。正には「関係者以入禁止」とかれた柵が置かれ、庭の隅には黒板やロッカー、製の棚が積みげられている。が吹くたび、どこかで属の板がカン、カン、と乾いた音をてた。
私は柵のから、しばらく舎を眺めた。3階の窓が枚だけいていて、その向こうには机も子もなくなった教が見えた。3まで、あそこには子どもたちがいて、笑ったり、叱られたり、をべたり、忘れ物を取りに戻ったりしていたはずだった。
がいなくなった建物には、独特の顔がある。空きも、閉した商も、使われなくなった駅舎も、同じ壁と窓を残しているのに、誰も使わないと分かった途端に役目そのものを失ったように見える。私は昔から、そういう所をしばらく眺めてしまう癖があった。
もしかすると、しするのかもしれない。使われなくなるのはだけではなく、建物にもにもにも終わりが来る。そう考えれば、63歳の自分が午4の過ごし方すら分からなくなっていることも、それほど特別なことではないような気がした。
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その、元に細いものが落ちているのが見えた。拾いげると、さ5センチほどの青いチョークだった。片方の先は丸く擦り減り、表面にはいと細かな傷がついていた。
柵の向こうには、解体された黒板が何枚も積みねられていた。受け皿に残っていたものが、運びす途で転がったのだろう。捨てようとったがくにゴミ箱がなかったので、私は何となくコートのポケットへ入れた。
そのには、それ以のなどなかった。ただの使いかけのチョークであり、へ帰れば忘れてしまう程度の拾い物だった。
ところが、その青いさな棒が、2ほとんど同じ形をしていた私の夕方に、最初の本の線を引くことになる。
学をれて10分ほど歩いた頃から、私はポケットののチョークが気になり始めた。歩くたびにの鍵とぶつかり、さな音がする。何度か取りして掌にのせると、そのの曇った空よりも、チョークの青の方がずっと鮮やかだった。
子どもの頃、特別に青が好きだった記憶はない。私は赤が好きで、箱も傘もできれば赤を選びたがった。ところが、いつからかは紺や、茶ばかりになり、は、傘は黒、器もかい茶ばかりになった。
歳を取ったからだろうか。それとも、にはに見せたい気持ちがし含まれていて、いつのにかそれが面倒になったのだろうか。
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そんなことを考えたのは、そのが初めてだった。
商を抜けると、完成したばかりのマンションが見えてきた。とを基調にした10階建てで、階にはコンビニが入っている。その所には以、さな町があったが、何を作っていただったのか私は最までらなかった。
マンションの横には、なぜか古いコンクリートの塀だけが残されていた。さは私の肩ほどで、さは30メートルくらいある。垂れの跡と黒ずみがあり、補修された部分だけがしるいになっていた。
私はそこでを止めた。理由などない。ただ、ポケットに入っている青と、目ののが妙に気になった。
ここに本、線を引いたらどうなるだろう。
った瞬、自分で自分を馬鹿だとった。63歳にもなって、の塀に落きをするなど、子どもに見つかれば注する側の齢である。私はそのまま5歩ほど歩いたが、なぜかまたち止まり、振り返った。
には誰もいなかった。しれた所を、自転に乗った男性が通り過ぎただけだった。私はもう度チョークを取りし、「何やってるんだろう」とさく呟きながら、塀の端の目たない所に先端を当てた。
すっと10センチほど横へかす。のに、本の青い線が残った。たったそれだけなのに、私はし驚いた。