"5枚で消された妻" 第1話
1994413午10過ぎ。
野県のあいには、になってもまだの名残があった。くの肌にはいが筋のように残り、から吹きげてくるはの着では耐えられないほどたかった。
国沿いに建つ古いビジネスホテルも、その寒々しい景のに取り残されたようにっていた。あせた板は型トラックが通り過ぎるたびにさく震え、窓ガラスの向こうには暗い廊が伸びている。
午10を回っても、2階のから宿泊客がてこなかった。
清掃を担当していた女性従業員は、廊の突き当たりくにあるその部のでを止めた。チェックアウトの刻はすでに過ぎている。
「お客様、失礼いたします。おですが」
コンコン、と扉を叩く。
返事はなかった。
もう度く叩き、内線話も鳴らしてみた。廊にっている従業員のに、部ので鳴り続ける呼びし音だけがかすかに聞こえてくる。
それでも、がく気配はなかった。
従業員は度フロントへ戻り、責任者と相談した、マスターキーを持って再び部へ向かった。
鍵を差し込み、ゆっくり回す。
ガチャリ。
い扉がいた瞬、え切った空気と、古い煙やい酒が混ざったような匂いが廊へ流れした。
カーテンは閉め切られていた。
わずかな隙から差し込むいのを、さな埃が浮かんでいる。
広告
は止まっており、からいがってくる気が元を包んだ。
「お客様……?」
女性従業員はさな声で呼びかけながらへ入った。
そして、ベッドのを見た。
そこにの女性が横たわっていた。
美幸、31歳。
彼女は仰向けのまま静かに目を閉じていた。顔は透き通るほど青く、掛け布団のに置かれた両もかない。
見すると、ただく眠っているようにも見えた。
しかし従業員がづき、胸がしていないことに気づいた瞬、喉の奥からい鳴が漏れた。
警察が到着したのは、それからもなくだった。
部は自然なほどっていた。
テーブルのには販の眠薬の空箱が2つ、みかけのが入ったグラス、そして酒の空き瓶が置かれている。
争ったような痕跡はない。
窓は閉まっている。
ドアにも破損はなく、第者が引に侵入したような形跡も見当たらなかった。
美幸の荷物は、さなハンドバッグだけだった。財布、分証、しの現。く滞するつもりだったようには見えない。
現へ入った担当者たちは、部を通り見回した。
「薬か」
誰かがさく呟いた。
婚調。
でホテルに宿泊。
量の眠薬。
酒。
目った傷なし。
それだけの報が、警察官たちのので素くつの形にまとまっていった。
広告
事件ではない。
庭問題を抱えた女性が、自ら量の薬をんだのだろう。
その結論は、現検証が分に終わるから、部の空気のに漂っていた。
司法解剖の結果、美幸の因は薬物の過剰摂取による急性毒とされた。
血液の薬物濃度は通常の用量をはるかに超えていた。
体には目った傷がない。
く抵抗した痕跡も確認されない。
第者の関与を示す確な証拠もない。
担当刑事は署へ戻ると、机のの報告へい文章を打ち込んだ。
現、夫との婚調。
精神負担を抱えていた能性。
薬物の過剰摂取。
事件性なし。
捜査記録は、わずか5枚のA4用にまとまった。
美幸がなぜ、自宅かられたこのホテルまで来たのか。
どの交通段を使ったのか。
誰かと会う約束をしていなかったのか。
薬局で購入した薬の量と、現に残された空箱の内容が本当に致しているのか。
夫である健は、そのの夕方から夜に何をしていたのか。
そうした確認は、ほとんど残されていなかった。
数、美幸の葬儀がわれた。
線の煙が細くちり、い読経の声が部に響いていた。
母のよし子は、娘の遺のからいけなかった。
まだ31歳だった。
婚さえ成すれば、しい活を始められるはずだった。
それなのに、黒の写真のの娘は、何もらないような穏やかな表でこちらを見ている。