"近道看板の逆襲" 第11話
「聞きました」
「私は何を違えたんだろうな」
俺はすぐには答えなかった。
「子供の頃から、欲しがるものは何でも与えた。悪いことをしても、私の名で周りが許した。それを止めなかった」
はくを見た。
「私があいつを、ああいうにしたのかもしれん」
「でも最に変わるかどうかは、本の責任ですよ」
「そうだろうか」
「そうです」
俺はの隣へ座った。
「になってまで、自分のを全部親のせいにはできません」
は何も言わなかった。
「今度こそ、本が自分で考えるしかないです」
しばらくしてはさく頷いた。
俺は話題を変えた。
「そうだ。今度トウモロコシを持ってきますよ」
「トウモロコシ?」
「今、結構いいのができたんです」
が初めてし笑った。
「そうか」
「糖度もがってきました。来はもっと広げようとってます」
「浩さんならできる」
その声には、久しぶりにらしい力が戻っていた。
俺はその言葉が嬉しかった。
に踏み荒らされた畑。
そこから育ったトウモロコシを、しいの名物にする。
それが番の答えかもしれないとった。
それから5が経った。
かつてのが何度もり抜けたトウモロコシ畑は、以とはまるで違う景になっている。
朝、畑へると、若い従業員が俺へ声をかけてきた。
「社、今の収穫分なんですけど、糖度がかなりいですよ」
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「社って呼ばれると、いまだに恥ずかしいな」
俺が笑うと、従業員も笑った。
今の俺は、平農園を母体に農業法を経営している。
あの事件から数、の勧めもあり、内に増えていた遊休農を借りて栽培面積を拡した。
最初に力を入れたのはトウモロコシだった。
あの、荒らされたでも派に育った作物。
悔しさもいも詰まった作物だった。
品種や肥料、づくりを何度も見直し、この域で受け継がれてきたを活用する農法の考え方も参考にした。
々品質は定した。
甘みがく、粒がきい。
直売所で売り始めると評判になり、やがて県からも注文が入るようになった。
トマトなどの作物にも栽培を広げた。
族だけではが回らなくなり、1、正式に農業法として組織をえた。
今では数の従業員が緒に働いている。
あの、トウモロコシを踏み倒されながらち尽くしていた俺には、像できなかった未来だ。
「パパー!」
声に振り返る。
しきくなったキララが、畑の向こうから歩いてきた。
幼い頃にのと接触した娘も、今ではあののことを断片にしか覚えていない。
「これ、べてもいい?」
収穫したばかりのトウモロコシを持っている。
「ちゃんと仕事伝ってからな」
「伝ったもん」
「本当か?」
「ママに聞いて」
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しれた所で作業していたが笑った。
「ちゃんと箱を運んでくれたよ」
「じゃあ特別に1本」
「やった!」
キララが嬉しそうにっていく。
父の虎之助も、齢はねたが今でも畑へ顔をす。
無理な作業はさせないようにしているものの、本は「まだ若い奴には負けん」と言って聞かない。
母も元気だ。
族5で始めた農業は、今ではくのが関わる仕事になった。
「今の来なら、もぶな」
父が畑を見ながら言った。
「そうだね。で持っていこう」
は、あの辞職しなかった。
民から引き止められ、そのも域のために働き続けた。
息子の事件があったことで、はのと顔をわせることさえ辛そうにしていた。
しかし誰もを責めなかった。
むしろ事件をきっかけに、のには以よりはっきり物を言う空気がまれた。
誰ののであろうと、悪いことは悪い。
して黙り込むのではなく、相談し、記録を残し、必なら声をげる。
それはさな変化だったが、このにとってはきかった。
例の警察官も、異はこのへ戻っていない。
については、刑を終えたどうしているのか詳しくはらない。
も必以には話さなくなった。
ただ度だけ、
「今度こそ、自分のは自分でて直してほしい」
そう言ったことがある。
俺も、それ以は聞かなかった。
許したわけではない。
娘が怪をしたのことも、畑を何度も踏み荒らされたりも忘れてはいない。