"近道看板の逆襲" 第2話
娘のキララだった。
まだ幼いが、の伝いを嫌がらず、収穫の期になると自分から畑へやってくる。
「キララもお伝いしたから、みかんさんいっぱいできたんだよ」
自げに胸を張る娘を見て、俺とは顔を見わせて笑った。
「ああ、そうだね。キララがいっぱい伝ってくれたから、みかんも元気に育ったんだ」
「ほんと?」
「本当。本当にありがとう」
キララは嬉しそうに笑った。
「こっちはもうすぐ終わるから、今度はおじいちゃんたちのお伝いをしてきてくれるか?」
「はーい!」
娘は元気よく返事をして、祖父母のいる方へっていった。
俺たちは、そんなふうに族で農業を続けていた。
みかんだけではない。
数から俺は、しい作物にも挑戦していた。
その1つがトウモロコシだった。
この域の栽培方法を応用しながら何も試験をね、ようやく応えをじ始めていた。糖度もく、順調にいけばのしい名産品にできるかもしれない。
収穫をに控えたあるのことだった。
畑仕事をしていると、くから父が慌てた様子でってきた。
「浩! 浩、変だ!」
普段はゆっくり歩く父が息を切らしながらってくる姿を見て、俺は驚いた。
「父さん、どうしたの? そんなにったら、また体調を崩すよ」
「そんな呑気なこと言ってるじゃない!」
虎之助は膝にをつき、何度か息をえた。
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そして顔をげた。
「おのトウモロコシ畑、変なことになってるぞ」
嫌な予がした。
俺は袋をすことさえ忘れ、そのまま父のを追った。
トウモロコシ畑へ着いた瞬、俺は言葉を失った。
何列にも並んでいたトウモロコシの部が、まとめて面へ倒れていた。
自然に倒れたのではない。
茎が定の幅で押し潰され、にははっきりとタイヤの跡が残っていた。
「なんだよ、これ……」
俺は畑のへ入り、折れた茎を持ちげた。
まだ青々としている。
収穫まであとしだった。
「が通った跡だな」
父がい声で言った。
タイヤ痕は畑の入りから直線に伸び、反対側の農へ抜けていた。
図で見れば、そのを通ると国までかなり距を縮できる。
だが、本来そこになどしない。
平が所する、れっきとした農だ。
「に使ったってことか」
「そうだろうな」
虎之助は押し潰された株を見ろし、悔しそうに唇を噛んだ。
「もうすぐ収穫だったのにな。うまくいけば、しいの名産物にできたかもしれんのに」
俺も同じことを考えていた。
数かけてをえ、品種を試し、育て方を夫してきた。
ようやく今はまとまった収穫が期待できそうだった。
それが、誰かがほんの数分をしたために踏み荒らされた。
「になることをってたってことは、犯はのなのかな」
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「浩、こっちへ来てみろ」
父が畑の入りくを指差した。
そこにはさな板がてられていた。
最初は自分たちが何か表示していたのかとったが、づいてみて腹がった。
きの矢印だった。
国方面。
まるでここが正式な抜けであるかのように、親切に方向までいてある。
「畑ので迷わないように、誰かが置いたんだろうな」
「の畑に勝に案内板まで……」
信じられなかった。
度違えて入ってしまったというなら、まだ分かる。
だが板を設置したということは、図に何度も通ろうとしているがいる。
俺はきの板を引き抜いた。
「これ、撤する」
「ああ。その方がいい」
「それだけじゃ駄目だな」
俺はに戻り、事用のカラーコーンをいくつか持ってきた。
畑の入りに並べ、さらにきなへ文字をいた。
私につき入禁止。
平農園。
ではありません。
これだけはっきり表示すれば、普通のなら入らないだろう。
そのの作業を終えた俺は、壊された作物を理しながら何度も畑を振り返った。
も事を聞き、配そうにしていた。
「誰なんだろうね」
「分からない。でも、さすがにもう入ってこないとう」
そう答えたものの、俺自はなぜか胸騒ぎがしていた。
夜になっても落ち着かなかった。
夕を済ませ、族が寝る準備を始めた頃、俺は懐灯をに取った。
「ちょっと畑を見てくる」