"白木蓮の偽証" 第1話
20204、野県部のあいにある柏尾町では、ようやく桜が満を過ぎたところだった。田んぼにはが入り始め、朝晩にはまだの名残の気が残っている。町れの県から細い農を300mほど入った所に、いあいだ空きになっていた古い平が軒あった。
そのは、かつて藤代と呼ばれていた。錆びたトタン根、ざらしの自転、伸び放題になったサザンカの垣。その庭の央には、が荒れてからも毎になるといを向きに咲かせる、きな蓮が本だけ残っていた。
の最のだった藤代沢子は、12、隣の特別養護老ホームで75歳の涯を終えている。相続を名乗りる親族はおらず、建物も老朽化していたため、町がごと理することになった。解体事が始まったのは、20204第2週のことだった。
午に根と壁がほぼ崩され、午から庭のへ移った。現の若い作業員が蓮を見げ、「このも切るんですか」と聞くと、を扱っていたの男はし惜しそうに頷いた。
「更にするって話だからな。派なだけど、仕方ねえ」
のアームが根元のを掬い始めた。湿った黒から特の匂いがち、太い根が何本もしていく。異変に気づいたのは、掘り返したをスコップで均していた若い作業員だった。
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いものに刃先が当たった。
最初はだとった。だがをし払うと、く丸みを帯びたものが現れ、表面には細かな筋とさなくぼみがあった。作業員は数秒それを見つめた、急に顔を変えた。
「止めてください」
の音にかき消されたため、彼はもう度叫んだ。
「止めて! 全部止めてください!」
庭にいた3が集まった。誰もすぐにはをかなかったが、の作業員だけが額の汗をの甲で拭い、「触るな」とく言った。携帯話を取りした彼の指は震え、110番を押す途で度番号を違えた。
通報から50分、県警の鑑識班と捜査員が現へ到着した。蓮の周囲には規制線が張られ、青いシートが広げられた。をしずつ取り除いていくと、成男性とわれる骨が体、根のから姿を現した。
町の々も集まり始めた。夕方の買い物帰りの主婦、犬を連れた老、学帰りの学たちが、規制線かられた農にっていた。誰もきな声では言わなかったが、ある名だけが、17ぶりに町のへ戻ってきた。
「……優さんじゃないかね」
誰かがそうにすると、隣にいた女性がさく息を呑んだ。
藤代優。京学法学部を卒業し、都内で弁護士をしていた男。200311、34歳のに実へ帰省した、「京へ戻る」と言って姿を消したままになっていた。
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当、柏尾町はその話で持ちきりになった。町からへんだだけでも珍しかったのに、司法試験を通り、京で弁護士になった青である。商には格を祝う垂れ幕まで掲げられ、町の老たちは自分の孫のように誇らしげに語っていた。
それほどの男が、ある突然消えた。
警察は京で何らかの事件に巻き込まれた能性がいと判断した。理由はつあった。柏尾駅の防犯カメラに優らしき男が映り、彼の携帯話は野、崎、京と順番に基局を移し、そして継母の沢子が「京へ帰ると言ってをました」と証言していたからだ。
そのつが、あまりにも綺麗につながっていた。
翌、県警本部は記者会見をいた。蓮の根元から見つかった骨は30代半から半ばの男性と推定され、埋められてから15以経過している能性があると発表された。
その聞記事を、隣の警察資料で読んでいる老がいた。
黒瀬壮、72歳。
17、藤代優失踪事件の捜査に加わり、藤代沢子から直接事を聞いた刑事だった。
黒瀬は聞をゆっくり畳んだ。蓮の写真を見つめたまま、17の台所をいしていた。掛けの卓、古い蛍灯、湯気のつ湯呑み、そして向かい側で静かに泣いていた女。
「あの子は、の子ではないのに……私を母と呼んでくれました」
沢子はそう言った。
黒瀬は、その涙を信じた。
そして17、そのの庭から優らしき骨がた。