"「子なし」離婚の大誤算" 第2話
「カードは使ってください」
最の慈でも与えるような声だった。
ドアが閉まった。
部には私1が残された。
しばらく何もせず座っていた私は、やがて黒いカードをに取った。
そしてゴミ箱へ落とした。
区役所をると、午の差しが眩しかった。
片でを遮りながら、もう方のを腹部へ添えた。
「丈夫」
誰に言うでもなく、私は呟いた。
「あなたは私が守るから」
健が初恋の女性とのしいに酔っていたその、彼はらなかった。
自分が急いで切り捨てた結婚のに、もう1のが始まっていたことを。
婚、私は港区のマンションをすぐに売却した。
あの部には、健との5が残りすぎていた。具の置き所も、窓から見える夜景も、美咲から話が来るようになった頃の沈黙も、全てが息苦しかった。
相よりしくても構わなかった。
く放したかった。
売却したの部と、それまでの貯を使い、私は神田にある古い商業ビルの角を借りた。
1階をさな写真館にし、の狭い根裏部を居にした。
写真館の名は「」。
だけは、誰にも奪えない。
そんないからつけた名だった。
陸がまれたは、よく覚えている。
10を超える陣痛だった。
病で何度も息をえながら、私は1で痛みに耐えた。
護師が記録を確認しながら尋ねた。
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「ご主やご族はいらっしゃいますか?」
私はしだけ黙った。
「父親はいません」
それだけ答えた。
健がどこで何をしているのか、私はらなかった。
きっと美咲としい活を始めていたのだろう。
まれた陸を初めて胸に抱いた、私はそのさな顔を見ながら議な気持ちになった。
目元。
。
元。
まだ赤ん坊なのに、どこか健をわせる部分があった。
けれど私は、そのことを考えないようにした。
この子は健の子供ではなく、私の子供だ。
そう決めた。
退院した私は、まれたばかりの陸を抱き、写真館のにある根裏部へ戻った。
そこからの活は像以に厳しかった。
授乳をしながら写真を理し、おむつを替えてから顧客へ話をする。陸を寝かしつけた、夜までパソコンに向かって画像を修正した。
泣き声が聞こえれば作業を止め、抱きげる。
眠ったとってベッドに戻すと、また泣く。
そんなことを何度も繰り返した。
写真館の仕事がないは、活費を計算するのが怖かった。
賃。
費。
ミルク。
おむつ。
医療費。
婚にもらった財産はあったが、それに頼り続けるつもりはなかった。
私は自分の力で、この子を育てると決めた。
何度も夜に陸を抱きながら窓のを見た。
には無数のかりがあった。
それなのに、世界に私と陸しかいないような孤独をじる夜もあった。
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泣きたくなることもあった。
それでも泣かなかった。
涙を流したところで、の予約が増えるわけでも、陸のががるわけでもない。
私は持っている力を全て、陸とカメラへ注いだ。
陸が初めて寝返りを打った。
初めて座った。
初めて私の顔を見て「ママ」と呼んだ。
初めてよろよろと1歩を踏みした。
私は全てを写真に残した。
仕事用の価な材ではなく、活のすぐそばに置いていたさなカメラで撮ることもかった。
写真のの陸は、いつも私を見ていた。
私のレンズのには、この子しかいなかった。
陸は成するにつれ、驚くほどのかからない子になった。
価なおもちゃを欲しがることもなかった。
私が忙しくしていると、写真館の隅の子に座り、古いレンズケースや具を並べるのを伝ってくれた。
「これはここ?」
「うん、そこに置いてくれる?」
「分かった」
まだ幼いのに、自分なりに母親を助けようとしてくれていた。
そんな姿を見るたび、胸の奥がくなった。
写真館「」も、しずつられるようになった。
最初は証写真や族写真がだった。
やがてコミで「自然な表を撮るのがい写真館」と評判になり、個ポートレートや商業撮の依頼も入るようになった。
私はが最も無防備になる瞬を逃さないことを切にした。
作った笑顔よりも、誰かを見た瞬にこぼれる表。