"保険金つき同居" 第11話
それでも声は震えなかった。
「私、あなたたちを憎んできるつもりはない。それじゃ残りのまであなたたちに渡すことになるでしょう?」
優太は何も言えなかった。
「だからもう、返してもらうものだけ返してもらって終わりにします」
最に。
みよ子はゆかりを見た。
「斗を巻き込まないでください」
ゆかりが頷いた。
「はい」
「あなたたち夫婦がどうなるかは、私には関係ありません。でも、あの子にの都でを嫌わせるようなことだけは、もうしないで」
ゆかりは初めて。
くをげた。
「……申し訳ありませんでした」
話しいが終わった。
みよ子はちがり、バッグを持った。
優太が最に呼び止めた。
「母さん」
みよ子は振り返った。
「何?」
「俺は……もう母さんの息子じゃないの?」
その質問だけは。
し胸に刺さった。
みよ子はすぐには答えなかった。
やがて。
静かに言った。
「んだ事実は変わらないわ」
優太の目に涙が浮かぶ。
「でも、族でいられるかどうかは、血だけで決まるものじゃないのよ」
それだけ言って。
みよ子は部をた。
廊へた瞬。
胸がし痛んだ。
それでも。
振り返らなかった。
それから半が過ぎた。
みよ子は内にある齢者向け賃貸宅で暮らしていた。1DKのさな部だったが、向きの窓からが入り、ベランダには自分で買った鉢植えのを並べている。
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朝7。
好きなにカーテンをける。
好きな番組を好きな音量で見る。
呂へ入る順番を誰かに聞く必もない。
蔵庫には。
「みよ子用」などとかれた箱はなかった。
糖尿病のため事には気をつけている。
それでもに度くらいは、商の喫茶でさなケーキをべる。
「半分だけなら先もらないでしょう」
そう言いながら笑うみよ子を、同じ宅にむ本芳がいつもからかう。
「半分でやめられるのが偉いのよ。私なんか個べちゃうもの」
は週に何度か緒に散歩するようになった。
芳も数、娘夫婦との同居をやめて暮らしへ戻った女性だった。
理由は違う。
それでも。
「族と距を置いた方が、族でいられることもあるのよ」
芳の言葉に。
みよ子は何度も救われた。
優太夫婦のは売却された。
約束通り。
売却に返せる分がみよ子へ戻され、残額についても面を作って分割返済が始まった。
ゆかりと優太は。
その、別居した。
婚するかどうかまでは。
みよ子は聞かなかった。
興がないわけではない。
ただ。
もう自分からろうとはわなかった。
優太からはに度ほどいが届いた。
〈母さん、今分振り込みました。体に気をつけてください〉
返事はしていない。
捨てもしていない。
箱のへ入れている。
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いつか読み返すが来るかもしれないし。
来ないかもしれない。
それでいいとっていた。
斗とは連絡を取っている。
最初のうちは申し訳なさそうなメッセージばかりだった。
〈おばあちゃん、ごめんなさい〉
〈俺、あのもっとく言えばよかった〉
みよ子は毎回同じように返した。
〈あなたが全部背負うことじゃないよ〉
。
斗の学で文化祭がかれた。
。
居へ引っ越した初に「見に来て」と言われた文化祭。
結局あのはけなかった。
今。
斗からもう度招待された。
〈今度は本当に来てほしい〉
みよ子はし迷った。
そして。
った。
体育館の台で演劇をする斗を。
番ろの席から見た。
劇が終わった。
斗は友を連れてきた。
みよ子を見て。
堂々と言った。
「俺のおばあちゃん」
以。
「友達にられたくない」と言わされたが。
今度は自分から紹介した。
みよ子は笑った。
「いつも斗がお世話になってます」
帰り。
胸の奥がし温かくなった。
失ったものばかりではなかった。
そのの夕方。
さな部へ戻ると。
仏壇のへ文化祭でもらったパンフレットを置いた。
「お父さん」
健の写真へ話しかける。
「斗、ずいぶんきくなったでしょう」
窓のでは夕が沈み始めていた。
「それからね」
みよ子はし笑った。
「私も、ちょっと変わったわよ」
70。
誰かの妻。
誰かの母。
誰かの祖母。
そういう名できることがかった。
もちろん。
それを嫌だとったことはない。
健の妻でいられたことも。
優太の母になったことも。
斗の祖母であることも。
切なだった。
ただ。
それだけではなかった。
渡辺みよ子というののも。
ずっとそこにあった。
族のためにすることと。
族をすることは。
同じではない。
許すことと。
元の関係へ戻ることも。
同じではない。
そしてを取ることと。
自分のを誰かへ渡すことは。
まったく別のことだった。
みよ子はベランダへた。
さな子へ座り、温かい茶をんだ。
誰にも急かされない。
誰にも部へ戻れと言われない。
夕暮れの空を。
見たいだけ眺めていられる。
「お疲れさま」
ふと。
健の声が聞こえた気がした。
45。
毎晩言ってくれた言葉。
みよ子は空を見たまま笑った。
「うん」
そして。
誰もいない部で。
今度は自分自へ言った。
「今も、ありがとう」
70歳から始まった暮らしは。
寂しさへ戻るための活ではなかった。
ようやく。
自分のを。
自分のへ取り戻した活だった。