"特大おにぎりの恩返し" 第1話
「パパ、今度の曜、なんだって」
夕を終えたばかりのテーブルで、7歳の息子・太がランドセルから枚のプリントを引っ張りした。俺――黒川雅は、翌の現打ちわせの資料から目をし、そのを受け取った。き先は内の物園で、持ち物の欄には筒、敷物、具、そしてきな文字で「お弁当」とかれていた。
「何を入れてほしい?」
「唐揚げと卵焼きとウインナー。それからイチゴ。あと、おにぎり!」
「全部入れたら、弁当箱よりリュックのほうがくなるぞ」
そう言うと、太は真剣な顔で「じゃあきいリュックにする」と答えた。向かいに座っていた母が吹きし、俺の祖母・静も、髪を揺らしながら楽しそうに笑った。
太の母親は、もういない。妻の真由は3、い闘病の末にくなった。俺では仕事と子育てを両できず、今は両親と95歳になる祖母と同居し、族全員に助けられながらどうにか父親を続けている。
俺は父から建設会社を継いで1目だった。社員は42、請けを含めれば現には100くが入りする。社という肩きは像していたよりく、資繰り、全管理、取引先へのげに追われ、夕の途でも話が鳴ることが珍しくなかった。
「おにぎりなら、私が握ってやろうかね」
静が言った。
「ひいばあちゃんが?」
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太の目が輝く。
「ただし、私のおにぎりはきいよ」
「どれくらい?」
祖母は両でソフトボールほどの丸を作った。それを見た瞬、俺はわず箸を止めた。
「……懐かしいな」
母がこちらを見る。
「雅もよく持っていったものね。特の梅干しおにぎり」
「4個とか入ってたよな」
「4個どころじゃないよ。あんたが『りない』って言うから、のなんか5個握ったこともあった」
祖母の笑い声を聞きながら、20以の匂いが突然よみがえった。苔のり、塩の効いたい飯、祖母が毎漬けていた酸っぱい梅干し。そして、のので、俺の隣に座っていた痩せた女の子の顔。
浅川亜美。
学4のだった。
当の俺は、勉も運も得ではなかった。唯誰にも負けない自信があったのは、べることだった。のになれば番におかわりへ並び、余ったプリンや牛乳がれば、誰よりくを挙げる。
そんな俺に、たっただけ本気で挑んでくる女子がいた。
亜美だった。
彼女は俺とは正反対に、腕も脚も細く、でも同じいセーターを着ているような子だった。それなのにのになると、俺以の勢いでおかわりへった。
「先、カレーまだありますか?」
「待て! 俺も!」
「雅君、遅い。今は私の勝ち」
「まだじゃんけんしてないだろ!」
余ったデザートがつなら、決着は必ずじゃんけんだった。
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勝っても負けても、亜美はげさなくらい笑い、俺も本気で悔しがった。
だから俺は、彼女がたくさんべる理由を度も考えたことがなかった。
いしん坊同士。
ただそれだけだとっていた。
あののまでは。
「パパ?」
太の声でに返った。
「どうしたの?」
「いや……昔のこといしてた」
「?」
「ああ」
俺は祖母を見た。静は俺が何をいしたのか分かったらしく、笑顔をしだけ静かなものに変えた。
「亜美ちゃんのことかい」
その名を族ので聞いたのは、何ぶりだっただろう。
太が首を傾げる。
「亜美ちゃんって誰?」
俺はすぐには答えられなかった。
学を卒業するにればなれになり、その、数続いた賀状も途絶えた。になってから何度か名を検索したことはあるが、同姓同名がく、本を見つけることはできなかった。
「パパの昔の友達だよ」
結局、それだけ答えた。
祖母は何も言わず、湯みに茶を注いだ。俺もそれ以話さなかったが、のプリントを眺めているうちに、記憶はもう止められなくなっていた。
の。
腹を空かせた俺。
祖母が握った特のおにぎり。
そして、みんなが弁当を広げるで、だけ膝を抱えていた亜美。
あの。
彼女は確かに言ったのだ。
「お弁当、忘れちゃった」
だがそれは、嘘だった。
学4だった俺にとって、とは景を見る事ではなかった。
朝からを登ると聞かされたは本気で嫌だったし、先が「自然のでをじましょう」