"200円の家族" 第5話
夜になると、美咲が料理を作った。
最初は「費を払えないから、せめて料理だけでも」と言っていたが、いつのにか3で卓を囲むことが自然になった。
翔太は相変わらず「いただきます」と言えなかった。
おいしいとも言わない。
しかしコンビニ弁当をべていた頃より、事のがくなった。
美咲が料理について話し、桜が幼稚園であったことや好きな物について話す。
翔太はほとんど聞いているだけだった。
それでも、以ならすぐ机へ戻っていたのに、今は桜の話が終わるまで席をたなくなっていた。
ある。
桜がクレヨンで描いたを持ってきた。
「翔太お兄ちゃん、見て」
には3のが描かれていた。
美咲。
桜。
そして翔太。
3はをつないでいる。
真んにいる翔太らしい物は、きなをけて笑っていた。
「僕は笑っていません」
翔太が指摘すると、桜はく首を振った。
「笑ってるよ」
「実際には笑っていません」
「でものでは笑ってる」
桜は自信満々だった。
「桜には分かるもん」
美咲がそのやり取りを見ながら、優しく微笑んだ。
「子供って、が隠していることもと見抜くんですよ」
その夜。
翔太は久しぶりにを見た。
誰かが笑っていた。
顔は見えない。
ただ、懐かしい声だけが聞こえた。
「また笑えるようになったら、きっと幸せになれるよ」
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目を覚ました。
翔太の頬は濡れていた。
指で触れる。
涙だった。
隣の布団では、美咲と桜が寄り添って眠っていた。
その寝顔を見ているうちに、胸の奥に今まで避けていたが浮かびがった。
守りたい。
それが何なのか理解した瞬、翔太は怖くなった。
誰かを切にする。
それは、再び失う能性を受け入れるということだった。
同居活が2週ほど続いた頃。
翔太は指導教授の紹介で、弁護士の岡田健が経営する法律事務所を訪れていた。
岡田は50代の穏やかな男性で、翔太が学へ入った頃から何度か相談に乗ってくれていた。
「君は本当に優秀だね」
資料を見ながら岡田が言った。
「ただ、しすぎる」
翔太は姿勢を崩さず聞いていた。
「法律は論理だけで運用されるものではない。もちろん論理は必だよ。でも法律が守ろうとしているのは、なんだ」
「理解しています」
「本当に?」
岡田は笑った。
「は理にだけきているわけじゃない。しんだり、違えたり、誰かを好きになったりする。そこを理解しないと、本当にを守れる法律にはなれないよ」
以なら、その言葉を曖昧な精神論だと考えただろう。
しかし今は、美咲と桜の顔がに浮かんだ。
岡田は翔太を眺め、し目を細めた。
「そういえば最、表が柔らかくなったね」
「変わっていません」
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「本はそううものさ」
岡田は類を片づけながら話題を変えた。
「ところで、事務所で事務員を1探しているんだ。のが庭の事で辞めることになってね」
翔太が顔をげた。
「経験は必ですか?」
「基本なパソコン操作ができて、真面目ななら丈夫。子育てなら勤務も相談できる」
その瞬。
翔太のに美咲の顔が浮かんだ。
なぜ真っ先に彼女をいしたのか、自分でも分からなかった。
「実は、1紹介したいがいます」
翔太は美咲の状況を必な範囲で説した。
夫に貯を持ち逃げされ、別居であること。
5歳の娘がいること。
来週から清掃の仕事が決まっているが、より定した職が必であること。
岡田は黙って最まで聞いた。
「なるほど。変だったんだね」
「能力については保証できません。私もりって2週です」
「君がわざわざを紹介すること自体、珍しい」
岡田は楽しそうに笑った。
「まずは面接に来てもらって。事が事だから、娘さんを連れてきても構わないよ」
事務所をた翔太は、帰りで自分のについて考えた。
美咲が仕事を得れば、経済に自できる。
居を確保しやすくなる。
桜の活も定する。
理だ。
そう説できる。
しかし、それだけではないことにも気づいていた。
2に幸せになってほしい。
そのが、自分のにまれている。
アパートへ戻ると、桜がに座って絵本を読んでいた。
「翔太お兄ちゃん、おかえり」