"200円の家族" 第1話
翔太、23歳。学4の彼は法学部で学び、卒業は司法試験格を目指していた。
成績は常に学部の位で、教授たちからの評価もかった。条文や判例を正確に覚えるだけでなく、複雑な事案を理し、最距で結論へたどり着く力に優れていたため、「将来は優秀な法律になるだろう」と期待されていた。
しかし翔太には、友と呼べるがほとんどいなかった。
あるの午、学図館の隅で民法の判例集を読んでいると、同じ法学部の田が机の横にった。
「おい、。今みんなでみにくんだけど、おも来ないか?」
翔太は顔をげることもなく、いていたページへ線を落としたまま答えた。
「は民法の試験があります。み会に参加することで得られる利益と、勉を失うことによる損失を比較すれば、者の方がきいと判断します」
田はしばらく翔太を見つめ、それから呆れたように息を吐いた。
「お、本当にロボットみたいだな。たまには損得じゃなくて、でいてもいいんじゃないか?」
その言葉に、翔太の指が瞬だけ止まった。
だがすぐにページをめくる。
「は判断を誤らせます」
返事はあまりにもかった。
まるで誰かに説しているのではなく、何度も自分自へ言い聞かせてきた言葉を繰り返しているようだった。
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「はいはい。じゃあ、またな」
田は首を振りながらっていった。
翔太はその背を見ることもなく、再び判例集へ識を戻した。周囲では学たちが笑い、週末の予定や恋の話をしていたが、その声は翔太には関係のない世界から聞こえてくる雑音のようだった。
夕方になると、翔太は1暮らしのアパートへ帰った。
学から徒歩圏内にあるワンルームで、部のには机、子、ベッド、さな本棚と最限のしか置かれていない。壁には写真もカレンダーもなく、棚のにもいの品と呼べるものは何ひとつなかった。
蔵庫をけると、に買っておいたコンビニ弁当が入っていた。
翔太は栄養成分表示を確認して子レンジへ入れる。夕を選ぶ基準も、ではなく価格と栄養、そしてだった。
温め終えた弁当を机へ置き、テレビもつけずにべ始める。
おいしいかどうかを考えることはない。
体を維持するために必な栄養を摂取する。
それだけだった。
事を終えると、すぐに机へ戻った。
法律の条文を確認し、判例を読み、ノートへ論点をきす。曖昧なが入り込む余のない法律の世界は、翔太にとって最もできる所だった。
事実を理する。
ルールを適用する。
結論をす。
そこには突然裏切るも、い通りにならないのもしない。
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夜1を過ぎた頃、翔太は勉を切りげてベッドへ入った。
目を閉じる直、の奥に何かが浮かびかけた。
のい差し。
青い。
誰かの笑い声。
しかし形になるに、翔太は識を閉ざした。
考える必はない。
過をいしても利益はない。
起きれば、また勉すればいい。
そうして翔太は眠りについた。
翌の夕方。
翔太はいつものファミリーレストランへ入った。
学からく、価格が頃で、栄養バランスを調しやすい。このを利用する理由も、彼にとってはそれだけだった。
窓際の1席へ座り、替わり定を注文する。
料理を待つ、鞄から法全を取りした。
内では族連れの子供が笑い、学たちが声で話し、器の触れう音が響いていた。しかし翔太の識は条文だけに向けられていた。
そのだった。
「すみません……お会計をお願いします」
レジの方から、か細い女性の声が聞こえた。
普段なら気にも留めないはずだった。
だがその声があまりにも震えていたため、翔太は無識に顔をげた。
レジのには、20代半ばほどに見える若い女性と、5歳くらいの女の子がっていた。
女性は古びた財布を両で握りしめている。
女の子は母親のの裾をつかみ、そうに員を見げていた。
「お客様、ご注文いただいたお子様用カレーライスは500円になります」
員が申し訳なさそうに説すると、女性の顔が青ざめた。