"一万八千円の飯" 第1話
川優馬が、自分の族が経営するホテルで客として事をする。それ自体、彼にとってはし妙な覚だった。
正確に言えば、そのホテルは父親のものだった。父は何もないところから商売を始め、約30をかけて現の財産を築きげ、今では5つの「運ホテル」を3舗展している。
優馬は26歳。イギリスでホテル経営学を学び、帰国したばかりだった。
父から継者として特別扱いされることはなく、本ではロビー副支配として働いていた。も約25万円で、現のリーダーたちときく変わらない。
「を継ぎたいなら、まず番で働くが何を見て、何をじているのかれ」
それが父の癖だった。
優馬自、その方針に満はなかった。幼い頃に実母・子をくし、父はその、里見という女性と再婚した。2のには腹違いの弟・がまれたが、複雑な庭環境について、優馬はなるべく考えないようにしてきてきた。
そのは曜で、優馬は休みだった。
自宅でくつろいでいると、交際して2になる葵から話がかかってきた。テレビ局で番組制作をしている彼女は、方から帰ってくる学代の親友・美と、ゆっくり話せるを探しているという。
「だったら運ホテルにする?」
優馬が提案すると、葵は話の向こうで笑った。
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「いいの? せっかくだし、お願いしようかな。先に席だけ取っておいてくれる?」
「分かった」
午530分頃、優馬は運ホテル本へ向かった。
仕事ではないため、紺の襟付きシャツにチノパンという簡単な装だった。般客に混じってロビーを歩けば、彼がオーナー族のだと分かる者はほとんどいない。
本には300以の従業員がいるうえ、優馬は帰国してまだが浅い。父が「本当の現を見るためだ」と分を伏せさせていたこともあり、経営幹部の部を除けば、彼が川の男だとらない者の方がかった。
ラウンジの窓際でをみながら待っていると、午6をし回った頃、葵が美を連れて現れた。
美は細で鏡をかけた、落ち着いた印象の女性だった。で働いていたらしく、い活のせいか、本が恋しくて仕方がないという。
「じゃあにしようか」
優馬はそう言い、2を5階のレストランへ案内した。
ちょうど板が変わったと聞いていたこともあり、料理の状態を客のから見てみたいという気持ちもあった。
案内係に通されたのは、窓際の4掛けの席だった。
落ち着いた目の内装に柔らかな照が落ち、いテーブルクロスのには美しい陶器が然と並べられている。価格は決してくないが、5つホテルのレストランとしては自然ではなかった。
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美は級魚の煮付けと季節野菜の炊きわせを、葵は老のぷらを注文した。
優馬は事のページをめくり、「特製鮮炊き込みご飯」という文字で指を止めた。
価格は1,800円。
級ホテルのご飯として考えれば、ごく普通の範囲だ。
「俺はこれにする」
員が注文を復唱し、メニューをげていった。
料理を待つ、美はでの仕事や、最別れた恋について話した。途でし目を赤くすると、葵が慌ててナプキンを差しす。
優馬は慰め方が分からず、し考えてからをいた。
「まあ……縁がなかったってことじゃないかな」
「それ、慰めになってないから」
葵に呆れられ、美が吹きしたところへ、ちょうど料理が運ばれてきた。
煮付けはがふっくらとしていて、ぷらもが軽い。事がむにつれ美の表もるくなり、スマートフォンで何枚も写真を撮っては、SNSに載せると言ってんでいた。
最に運ばれてきたのが、特製鮮炊き込みご飯だった。
みのあるい器に炊き込みご飯が盛られ、にはばしく炙った帆が乗っている。優馬がべると、汁が粒粒に染み込み、帆の旨がほどよいアクセントになっていた。
確かに美しい。
だが、特別な驚きがあるほどではなかった。
3で事を終え、しばらく話をした、優馬は員を呼んだ。
「会計をお願いします」
若い女性員が黒いバインダーを持ってづき、丁寧に礼してテーブルへ置いた。