"愛人旅行の代償" 第7話
緒にいてくれて助かった。
そんな言葉を、度でもから言ってくれていたなら、美のはし違っていたのかもしれない。
けれど、今の秀治がにしたのは、ももも失いかけた男の、都のいい「やり直したい」だった。
美は静かに首を横に振った。
「あなたはを失ったんじゃありません」
秀治が顔をげた。
美はまっすぐ言った。
「自分で帰る所を捨てたんです」
秀治は何も言えなかった。
更を囲むロープがに揺れている。そこには、もう美が守るべきはなかった。
けれど、美には議と寂しさだけではないがあった。
終わった。
その実が、胸の奥に静かに広がっていた。
そのの話しいは、ではなく類でんだ。
秀治は最初、何度も「夫婦のだ」「俺が稼いだ退職だ」と主張した。だが、結がそばでつずつ確認していくと、その声はしずつくなっていった。
活座から織へ送られていた。
旅に使われた費用。
織と活を始めるために予約していた具の内。
それらは、美に何の相談もなくかされていた。
秀治はそのたびに顔をそらした。
「俺だって、これからのを考えて……」
「私のは考えましたか?」
美が静かに尋ねると、秀治は黙った。
36。
美は秀治の転勤にも、親戚付きいにも、仕事の愚痴にも付きってきた。
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定は夫婦で落ち着いて暮らすのだとっていた。そう信じていたからこそ、毎のさな満もみ込んできた。
だが秀治は、定を夫婦の区切りではなく、美を捨てる図にした。
しかも、ただ別れたいと言ったのではない。
退職を使い、織と旅にき、帰国は美を追いし、そのに織をまわせるつもりだった。
おも、も、居所も、すべて奪われるはずだった。
それでも秀治は、自分が悪いとはまだ本気でっていないようだった。
「おがげさにしたから、織も逃げたんだ」
秀治は苦し紛れに言った。
美はそれを聞いて、ほんのしだけ笑った。
「織さんは、あなたにとおがあるとっていたから緒にいたんでしょう。なくなった途端にれた。それだけです」
「そんな女じゃない」
「では、なぜ今ここにいないの?」
秀治は答えられなかった。
更ので織がっていったの顔を、秀治自も覚えているはずだった。そこにはなかった。あったのは、計算が狂ったの失望だけだった。
結は淡々と類を理した。
「お母さんは今、別の所で暮らします。お父さんとは必な続き以、直接連絡を取りません。連絡はすべて面でお願いします」
「親子なのにたいな、結」
秀治が言うと、結は表を変えずに返した。
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「お母さんを追いそうとしたに言われたくない」
その言葉に、秀治はまた黙った。
美は結の横顔を見た。
娘はもう、守られるだけの子どもではなかった。母が黙って耐えてきたものを、きちんと見て、言葉にしてくれるになっていた。
それが嬉しくもあり、申し訳なくもあった。
「結、ごめんね」
帰り、美がそう言うと、結は振り向いた。
「何が?」
「こんなことに巻き込んで」
結はし困った顔をした。
「巻き込まれたなんてってないよ。お母さんが今まで1で抱え込みすぎてただけ」
美は黙った。
「これからは、ちゃんと頼って」
結の言葉に、美はさく頷いた。
「ありがとう」
売却されたのかられる、美は度だけ振り返った。
もうも庭もない。
季節ごとに入れをしていた壇も、秀治の靴を何度も揃えた玄関も、結が学から帰ってきて駆け込んできた廊も、形としては消えていた。
けれど、美はった。
あの所に残っていたのは、だけではなかった。
も、諦めも、夫の嫌をうかがう々も、そこに置いてきたのだ。
これからは、しい所できればいい。
それは簡単なことではない。
けれど、なくとも誰かにてけと言われるではない。
誰かのに、もう奥様の所ではなくなると言われる所でもない。
美はく息を吸った。
夕方のが頬に触れた。
したかったが、議とよかった。