"愛人旅行の代償" 第6話
美はでかなかった。
ひとつずつ確認し、写真を残し、必な類に目を通した。
夕方、のがしずつ空になっていく、美は仏壇のに座った。ここは母が残してくれたに建てただった。美の母は、若い頃から苦労をね、娘が困らないようにとを残してくれた。
美はをわせた。
「お母さん、ごめんね。でも私、ここから直すわ」
線の煙が細くがった。
そのの夜、美は秀治の携帯と宿泊先に通を送った。
を売却すること。
私物は写真を撮ったで倉庫へ保管したこと。
活座から使われた旅代、織への振り込み、具への予約について確認を求めること。
文面は淡々としていた。
りもみもかなかった。
ただ、事実だけを並べた。
その頃、秀治はまだの向こうで笑っていたはずだ。
級ホテルのレストランで、織とグラスをわせながら、帰国の活を見ていたのだろう。
けれどその元では、すでに帰る所が静かに消えていた。
3、秀治と織を乗せたタクシーが、かつてのので止まった。
秀治は窓のを見て、最初は何が起きているのか分からなかった。
「おい、運転さん。所を違えていないか?」
運転はナビを確認し、落ち着いた声で答えた。
「いえ、ここでっていますよ」
「そんなはずない。
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俺のがあるんだ」
秀治は慌ててタクシーをりた。
その先にあったのは、でも庭でも、見慣れた玄関でもなかった。
ロープで囲まれた更。
そして、そこにてられた「売却済み」の板。
秀治の顔から血の気が引いた。
「……何だよ、これは」
織も遅れてからりた。旅帰りの華やかな装のまま、スーツケースを引いている。だが、更を見た瞬、その表から笑みが消えた。
「秀治さん。はどこ?」
「美だ」
秀治は歯ぎしりするように言った。
「あいつが勝にやったんだ」
その、の向こうから美が歩いてきた。隣には結がいた。
美は落ち着いた装で、には封筒を持っていた。以のように慌てる様子も、泣きそうな顔もしていない。
秀治は美を見つけると、りに任せてづこうとした。
「美! お、何をした!」
結が歩にた。
「声をさないで。話は類でしてください」
「黙れ、結。これは夫婦の問題だ」
美は静かに言った。
「勝ではありません。通は送りました」
「読んでない!」
「読まなかったのはあなたです」
秀治は顔を真っ赤にした。
「俺のをこんなふうにしやがって」
「このは私の名義です」
美の声は穏やかだった。
けれど、その穏やかさは秀治をさらに苛たせた。
「夫婦のだろう!」
「あなたはここにんでいただけ。んでいたことと、持っていることは違います」
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結が封筒を差しした。
「こちらが登記類の写しです。それから、活座から織さんに使った分、旅代、具の予約について、返還の話をしましょう」
秀治は封筒を払いのけそうになったが、結のたい線にを止めた。
「こんな、払えるか」
「退職があるでしょう」
結は淡々と言った。
「織さんと使うと言っていたおが」
織が歩ろへがった。
「秀治さん……もないの? それに請求まで来ているの?」
「待て、織。これは美が勝に……」
「私、老破産するの世話をするために緒にいたんじゃありません」
織の声はたかった。
「織、違う。俺には退職がまだ……」
「その退職も請求の対象になるんでしょう?」
織は秀治のを振り払った。
旅先では寄り添っていたはずの腕が、今はまるで汚れたもののように扱われた。
「待ってくれ」
秀治が縋るように言ったが、織は産袋だけを持ってタクシーの方へ歩きした。
よりの速いものはない。
空港のく歩でも勝てないほどだ。
織は振り返らなかった。
タクシーのドアが閉まり、そのままりっていった。
秀治は更のにち尽くした。
さっきまで勝ち誇っていた男の背が、急にさく見えた。
やがて、秀治はそのに座り込んだ。
「美……やり直せないか」
その声は、驚くほどかった。
美は秀治を見ろした。
36、聞きたかった言葉はにあった。
ありがとう。
苦労をかけたな。