"湖底の五本柱" 第15話
しかし、まだ解けない謎が残っていた。
1500万円の方である。
黒田の遺体周辺からも、田と佐藤の所持品からも、は発見されなかった。寺の遺体にもなかった。が持ちったまま没したのか。それとも、まだどこかに隠されているのか。
そのの夕方、警察病院から緊急の連絡が入った。
相馬賢の容体が急変したという。
相馬は錯乱状態ので暴れ、鎮静剤を打たれて眠っていたが、うわごとで奇妙な数字を繰り返していると報告があった。
藤が病に駆けつけると、相馬はベッドに拘束されたまま荒い呼吸をしていた。目は半きで、井の点を見つめている。医師は、極度のストレスによる精神発作であり、予断を許さない状態だと説した。
藤はベッドの横にち、相馬の顔を覗き込んだ。
相馬の唇がかすかにいていた。
「530……530……」
それは呪文のようだった。
「530?」
藤は眉を寄せた。
刻か。
部番号か。
それとも座標か。
彼はすぐに相馬が持っていたダムの図面を再び広げた。測量点、管理番号、航空写真、施記録。あらゆる資料を照したが、530に該当する測量点は見つからなかった。
しかし、ダムの湛計画のに、その数字はした。
標530メートル。
それはダムが満になったの最位、サーチャージ位を示す数値だった。
そして現、によるゲート操作の響で、ダムの位は異常な速度でその530メートルにづいていた。
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藤は、背をたい汗が伝うのをじた。
はなぜ、ダムを満にすることにこだわったのか。
単なる復讐や破壊衝ではない。
もし彼がを使って何かを隠そうとしているのではなく、何かを起させようとしているのだとしたら。
標530メートルまでが達した、何が起こるのか。
藤は部に命じ、標530メートル点にある施設や形をすべて洗いさせた。
そのほとんどは、旧の林や崖、没予定のだった。
だが1か所だけ、物がした。
旧代から残され、ダム建設のために移設されることなく放置されていたさな祠。
龍神の祠だった。
その祠は、面に突きす岬の先端、ちょうど標530メートルの位置にあった。ダムが完成すれば、面ぎりぎりに浮かぶ島のようになる設計だった。
藤は資料を叩きつけるように閉じた。
「隊をせ。ボートを用しろ」
部が顔をげる。
「今からですか」
「今すぐだ。茂蔵がもしきているとすれば、そこしかない。そして消えた1500万円も」
夕が迫る、警察ボートが黒い面へ繰りした。
ダムはまだ正式なではなかった。面には量の流や砂が浮かび、濁ったが規則に渦を巻いている。サーチライトが面をなめるように照らし、ボートは流を避けながら慎にんだ。
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やがて、のにさな岩が浮かびがった。
そのに、古びたの祠がっていた。
はすでに祠の台を洗い始めている。
ボートが接岸し、藤たちは銃を構えて陸した。
祠の扉はけ放たれていた。
には誰もいなかった。
だが、祠の央に黒い革のボストンバッグが置かれていた。
あの写真に映っていた、の鞄だった。
鑑識員が慎に鞄をく。
には、ビニールで厳に梱包された1500万円の札束が、1束も欠けることなく詰め込まれていた。
そして札束のに、1通のが置かれていた。
封筒には達な文字で、こう記されていた。
「相馬賢殿」
藤は袋をしたでを取りし、を改めた。
そこには、茂蔵の最の告が記されていた。
それは、き残った相馬に対する呪いとも救済ともつかない、いメッセージだった。
そして、そのを読み始めた、藤はこの事件がまだ表の顔しか見せていなかったことをるのである。
茂蔵のは、怨に満ちた乱れた文字ではなかった。
むしろ驚くほど静で、った跡だった。まるでを削ぎ落とし、準備してきた事実を最に報告するための文のようだった。
藤は祠ので懐灯を元に当て、慎に読みめた。
は、1500万円の由来から語り起こされていた。
「相馬賢殿。このは、君もよくるだ。