"湖底の五本柱" 第9話
藤は相馬の支滅裂な告を理するため、彼をよけのある本堂の縁側へ引きずった。
「最初から話せ。あの、午240分、ここで何があった」
相馬は震えるで、藤が差しした缶コーヒーを握り、ようやく語り始めた。
それは、欲と恐怖が招いた、獄のような1の記録だった。
あの、寺に到着した直のことだった。
作業員の田と佐藤は、すでに満を募らせていた。危険な悪候の、無理に作業をさせられていることへの苛ち。そして彼らは、ある噂を聞きつけていた。
茂蔵が、額の保証を持ち歩いているという噂である。
「おい、じいさん。持ってるんだろ。餞別くらい寄こせよ」
田がに詰め寄った。
最初は冗談めかしていたが、その目は笑っていなかった。
は自分の鞄を抱きしめ、ややかな目で田を見返した。
「これはおたちのような衆に渡すではない。の魂を沈めるためのだ」
その言葉が、田の導線にをつけた。
田はの胸ぐらを掴んだ。
寺が割って入った。
「やめろ、田。会社に報告するぞ」
「うるせえ。会社が俺たちに何をしてくれた。ダムが終われば首だろう」
佐藤も加勢した。
現は触即発の乱闘状態になった。
そのだった。
が鞄のから何かを取りした。
黒りする鉄の塊。
26式拳銃だった。
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「がれ。このには先祖の血が染みついている。汚れたで触れるな」
老の威圧に、作業員たちは瞬ひるんだ。
しかし次の瞬、田がの首を目がけてスパナを振りろした。
鈍い音がして、拳銃がのに落ちた。
り狂った田は、よろめくの部を、持っていたスパナで再び殴打した。
ごつ、という々しい音が響いた。
茂蔵は、糸が切れた形のように崩れ落ちた。倒れた拍子に、部を釣鐘堂の段の角にく打ちつけた。
老は、ぴくりともかなくなった。
がみるみる赤く染まっていく。
田が腰を抜かした。
寺が駆け寄り、脈を確認した。
そして蒼な顔で首を横に振った。
「んでる」
そこから、本当の悪が始まった。
寺は異常なほど静だった。あるいは、あまりの事態に理性が焼き切れていたのかもしれない。
彼はダム建設という国プロジェクトに傷がつくことを何より恐れた。
「事故じゃない。これは殺だ。警察が来れば事は止まる。会社は終わりだ」
寺は震える田と佐藤、そして相馬を見回して言った。
「隠すぞ。このだ。まで見つからない所に埋める」
彼らは、そので共犯関係を結ばされた。
の遺体をとりあえずブルーシートのに隠した。
そして、どう処理するかを話しっている最、第2の劇が起きた。
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田と佐藤が、の鞄をけたのである。
そこには1500万円の現束が入っていた。
「これで逃げよう。にでもけばいい」
佐藤が叫んだ。
寺がそれを止めた。
「馬鹿なことを言うな。を使えばがつく」
寺はのに落ちていた拳銃を拾いげていた。
そして、迷いなく引きを引いた。
ためらいはなかった。
会社を守るため。
あるいは自分を守るため。
彼は邪魔者を排除することを選んだのだ。
田は部を殴られ、佐藤は逃げようとしたところを捕まり、刃物で刺された。
そして、まだ息のあった佐藤をセダンのトランクに詰め込んだ。
田の遺体はくの沢へ運ばれ、とをかけて隠された。
寺は相馬に銃を突きつけて命じた。
「伝え。おも共犯だ」
彼らはホイールローダーを使い、佐藤と寺自を洞窟へ運んだ。相馬は移に逃げそうとしたが、恐怖でがかなかった。
洞窟ので、寺は極限のストレスと罪悪に押しつぶされ、自らのこめかみを撃ち抜いた。
残された相馬は、恐怖のあまり記憶が混濁し、当てもなくをさまよった。やがて洞窟の奥でうずくまり、懐計の音だけを聞き続けていたのだ。
「それが全部か」
藤が静かに問うと、相馬は激しく頷いた。
「ああ。俺は殺してない。見ていただけだ。伝わされただけなんだ」
「だが、おの話には続きがあるはずだ」
藤は目を細めた。
「なぜここに戻ってきた。なぜ鐘を戻すと言った」