"止められた12枚" 第8話
膿をして、会社の財政が健全になったとね」
エレベーターのドアが閉まり、彩子の姿は消えた。
残されたのは、いたままの玄関から見える空っぽの庫と、に転がる額縁だけだった。
欲望が通り過ぎたのは、廃墟のように見えた。
拘置所の朝は、の世界よりもたく暗かった。
狭い独ので、都は腫れがった目をそうにいた。涯、ので贅沢に暮らしてきた彼女にとって、拘置所の活は獄そのものだった。
い。
質素な便器。
何より耐えがたいのは、事だった。
扉のさな穴から、プラスチックの器が差し入れられる。めたご飯、具のない噌汁、数切れのたくあん。
「ああ、こんなもの、がべられるものですか。昨まではホテルで伊勢老をべていたというのに」
都はスプーンを投げつけ、泣き崩れた。
しかし返ってきたのは、監員のたい警告だけだった。
「604番、静かにしろ。べないなら片付けるぞ」
都は空腹に耐えきれず、やがて震えるでご飯をに運んだ。
その瞬、彩子が作ってくれた温かい肉じゃがといご飯、旬の果物が恋しくなった。
あの頃は、それが当たりだとっていた。
嫁は召使いで、自分は女王なのだと。
しかしその女王の冠が、嫁の犠牲のに成りっていたことに気づいたには、すでに鉄格子のだった。
広告
隣のに入れられた健の境遇は、さらに惨だった。
事に育てられたお坊ちゃまとして、仕事1つしたことのなかった彼は、荒々しい受刑者たちので格好の標になっていた。
「おい、。皿洗いもできないのか」
「ぼっとしてるんじゃないぞ。社と呼ばれてたからって、ここがホテルに見えるのか?」
「悪い、兄貴。今やります」
健は涙をこらえ、たいにを入れた。指の関節は切れ、赤く腫れがっていた。
彩子と暮らしていた、皿洗いどころか、1杯ですら彩子が用してくれた。
その優しさが、実は自分をらしくかしていた最のだったのだと、彼は骨に染みて悔した。
「彩子、ごめん。俺が悪かった。頼むから、ここからしてくれ」
やがて、裁判のが来た。
青い被告を着て縄で縛られた健と都の姿は、見るもなかった。髪は乱れ、顔はげっそりとこけていた。
法廷内はい空気に包まれていた。
傍聴席の最列に、彩子が座っていた。清潔のあるスーツにを包み、背筋を伸ばしている。その姿はたいほど美しかった。
都は彩子を見るなり、すりにしがみついて泣き叫んだ。
「彩子、お願い。助けてちょうだい。私が悪かったわ。どうか減刑にしてちょうだい。あなた、お持ちじゃない。たかが5億円くらい、私がていって政婦でもして返すから」
広告
健も隣で泣きながら続いた。
「彩子、俺は刑務所じゃきていけない。1度だけ見逃してくれ。おのを洗ってきていくから」
彩子は彼らの醜態を無表で見つめていた。
同など、ひとかけらもじられないたい差しだった。
彼女は席からちがることなく、静かにをいた。
「法に従ってください。罪を償うことが、せめてに戻るです」
その、法廷の扉がき、もう1の被告が入ってきた。
弓だった。
かつての華やかさはどこにもない。化粧は落ち、肌の荒れが隠せず、級ブランドのドレスの代わりに、ぶかぶかの被告を着ていた。
「弓!」
健はびとりが混じった声で叫んだ。
「お、俺のを返せ。お母さんのを返せ。100億円あるって言ったじゃないか」
弓は健をあざ笑うように見つめた。
「まだ目が覚めないのね。100億円? 笑わせるわ。私の通帳には100円もないわよ。あんたのお母さんの貴属は、賭けの借を返すのに全部使っちゃったわ」
「なんだと!」
法廷は瞬で修羅になった。
検察官が淡々と事実を読みげる。
「被告・弓は、常習な詐欺の容疑で指名配であり、成田空港にて偽造旅券を用いて国しようとしたところを逮捕されました。被告の所持品からは被害者らの品を処分した現の部が発見されましたが、その半はすでにインターネットの賭博サイトに送されたでした」
都は首のろを押さえ、倒れそうによろめいた。