"止められた12枚" 第1話
「どうして決済できないの? これは元妻が使えって渡してくれたカードなんだ」
級ホテルの宴会で、健は財布を握りしめたまま、顔を真っ赤にして員を睨みつけていた。
目のの支配は、端末の画面を確認しながら、表を変えずにをげた。
「お客様、申し訳ございません。このカードは利用止状態です。盗難・紛失届けがされており、決済ができません」
「なんだって?」
健の声が裏返った。ついさっきまでタキシード姿で胸を張り、招待客のでしい婚約者を見せびらかしていた男とはえないほど、彼の顔から血の気が引いていった。
「おい、員さん。械の故障じゃないのか。もう度やってみてくれ。もう度だ」
支配は無言でカードを端末に差し込んだ。宴会の片隅で、周囲の客たちがざわつき始める。
ピッ、という軽い承認音ではなく、吉な警告音が鳴った。
「やはり同じです。システムでは、婚された配偶者様によって利用止されたことになっております。警察をお呼びしますか。それとも、ほかのお支払い方法にされますか」
その言葉を聞いた瞬、健の隣にいた弓の表が凍りついた。
弓は華やかなドレスをまとい、指先にはきな宝の指輪をらせていた。つい数分まで、「私たち永に緒よね」
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と甘えた声で健の腕に寄り添っていた女だった。
「あなた、どういうこと?」
弓の声はく震えていた。
「300万円もする私たちの婚約式のを、あなたがすって言ったじゃない。みんな見ているのよ。恥ずかしくてたまらないわ」
招待客のからも、ひそひそ声が聞こえ始めた。
「あそこの、お持ちじゃなかったの?」
「300万円も払えないの?」
「カードが止められているって、どういうこと?」
健の母・都は、豪華な着物の袖を震わせながら、息子と支配ので線を泳がせていた。普段なら誰よりも声がきい都も、このでは元を引きつらせることしかできなかった。
「健さん、まさか……おがないんですか?」
弓が静かにそう言った、健の背筋をたい汗が伝った。
そのカードは、元妻である彩子が渡していたカードだった。
活費、接待費、の維持費、母親の買い物、友とのゴルフ、そして都の美容代まで。健と都はい、そのカードを当たりのように使い続けていた。
婚届に判を押したでさえ、彼らはまだそのカードが使えるとい込んでいた。
まさか彩子が、12枚すべてのカードを斉に止めているとは、にもっていなかったのだ。
支配は静かに言った。
「お客様、お支払いの確認が取れない、無銭として通報せざるを得ません」
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その言で、宴会の空気が完全に変わった。
華やかな音楽は、もう誰のにも届いていなかった。
そしてこの修羅こそ、彩子が静かに仕掛けた復讐の第1幕だった。
そのし。
京・港区の夜景を望できる層マンションので、彩子はいを止めた。
32歳の若さで社員100を抱えるベンチャー企業の代表。では誰もが羨む肩きを持ち、雑誌の取材も受けるほどのだった。けれど、玄関のドアロックを解除する彼女のは、鉛のようにかった。
ピッという子音のあと、ドアがく。
のには、むっとするようなの匂いと、テレビの騒がしい音が漂っていた。リビングのソファには、35歳の夫・健がよれよれのTシャツ姿で寝転がり、スマートフォンのゲームにになっている。
寝のドアは全だった。
そこからは、62歳の姑・都が話で鳴り散らす声が聞こえてくる。
「もしもし、担当の? どういうことなの? お隣の吉さんはおまけでフライパンセットをもらったっていうのに、なんで私はもらえないの? 私がこの通販でいくら使ったとってるの。責任者に代わりなさい」
彩子は玄関でバッグを置き、いため息をついた。
1会社で戦争のような会議をこなし、投資との打ちわせ、社員の相談、取引先との交渉に追われてきた。
やっと帰ってきたはずのは、らぎのではなかった。
もう1つの戦だった。
の気配に気づいた健が、寝転がったまま首だけをかした。