"嘘葬りの豆腐店" 第11話
美は痛みに耐えながら顔をげた。稲妻のに照らされた静の目は、異様なほどたかった。
「美。はどこだい。徹也に渡してやりな」
美は歯をいしばり、首を振った。
「だめです。このおは優の学費です。私がご飯を抜いてまで貯めたおなんです。これだけは絶対に渡せません」
静が歩づいた。
「あんたの夫がに追われてるんだよ。それでものに座り続けるつもりかい」
「徹也さんがギャンブルさえしなければいいことじゃないですか」
美は壁にをつき、ふらつきながらちがった。
抑え込んでいたりが、痛みと緒に噴きしていた。
「あのの借を返すために、私がどれだけ働いてきたかっていますか。朝から晩まで豆腐を作って配達して、このおは私の血と肉なんです」
静の顔が赤黒くなった。
「嫁のくせに、姑へ向かって答えするのかい」
「答えじゃありません。事実です。今回このおを渡しても、また賭へくに決まっています。だめです。絶対に渡しません」
美は息を荒げ、最の言葉をにした。
「私、の朝になったら警察へきます。全部通報します。夫が私を蹴って怪をさせたことも、違法賭博をしていることも、全部」
静の眉がぴくりといた。
「警察?」
「ええ。もうこれ以、できません」
静ののには、たった1つの景だけが浮かんだ。
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自分が育てげた息子が、錠をかけられ、パトカーに乗せられる姿。
「だめだ。私の息子が科者になるなんて」
静の線が、部の隅へ向いた。
ダルマストーブの横に、ずっしりとした角形の鉄棒がてかけられていた。
静はそれを握った。
たい鉄の触が、のひらにい込む。
「お義母さん、何をしているんですか」
美がずさったが、背は壁だった。
静の目には、もう理性は残っていなかった。
「私の息子のを、おに台無しにされてたまるか」
鉄棒が振りげられた。
「やめてください」
鈍い音が、音にみ込まれた。
美の体が力なくへ崩れ落ちる。
そのは、ポケットのにあるさなものを必に握りしめていた。
優の1歳の誕に用した、さなの指輪。
美はそれを握ったまま、かなくなった。
静は血のついた鉄棒をに落とした。
「私は……なんてことを」
その直、徹也が戻ってきた。
「は見つけたか、母さん」
部に入った徹也は、に倒れた美を見て凍りついた。
「なんだこれ。美、どうしたんだよ」
静は慌てて徹也の腕を掴んだ。
「徹也、しっかりしな。あんたが蹴ばしたせいだよ。さっきあんたが蹴って倒れたんだろう」
「違う。俺はただ1回蹴っただけで……」
「あんたが蹴ったからんだんだ。警察が来たら、おは殺しとして捕まるんだよ」
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徹也は顔を真っにした。
「母さん、俺どうしよう。助けてくれ」
「配するな。母さんが全部解決してやる。おはを閉じていな」
静はのへびし、くの部にいた次男の介を叩き起こした。
「介、何も聞かずにセメントを持ってこい」
「セメント? こんな夜に、なんで」
「つべこべ言わずに言われた通りにしな。じゃないと私たち全員終わるんだよ」
が吹き荒れる夜、3の親子が古いボイラーに集まった。
徹也と介が板を剥がし、湿ったの面をさせる。
静は美の体を引きずってきた。首元には、彼女がよく使っていた柄のスカーフが力なく絡んでいた。
「ここだ。もっとく掘れ」
介は泣きながらセメントの袋を破り、を注いで練った。
ばしゃ、ばしゃ。
スコップがセメントを混ぜる音が、音に混じる。
「義姉さん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
介は泣きながら、美のにのセメントを流し込んだ。
静はたく命令した。
「全部覆い隠せ。匂いがしないように、きっちり塗るんだ」
セメントが固まるにつれ、美のはのへ封じ込められていった。
夜け頃、静は庭のドラム缶のにっていた。
血のついた類、布団、赤ちゃんの写真。それらを炎のへ投げ入れる。
燃えがる炎に向かって、い塩をまき散らした。
「来るな。幽霊になっても来るんじゃないよ。とっとと消えな」
そのから、静はボイラーの扉にきな京錠をかけた。