"嘘葬りの豆腐店" 第5話
「はい。ほぼ毎来ていましたよ。昼からビールんで、カラオケって、1だらだらして帰っていました」
「嫁が消えて方も分からないのに、探しにくどころかスナックで笑って遊んでいたってことか」
ママは俯いたまま、何も言えなかった。
警察署へ戻るので、藤はハンドルをく握った。
この族は、美を徹底に孤させた。
きているはこき使い、んでからも名誉を踏みにじった。
「男と逃げた嫁。子どもを捨てた母親。自分たちが葬っておいて、罪悪を軽くするためにんだへ濡れを着せたのか」
奥歯がぎりりと鳴った。
署に戻ると、藤は刑事課の机へまっすぐ向かい、報告を叩きつけた。
「課。美の件、単純なではありません。遺棄および殺の疑いで事件を切り替え、族全員の柄を押さえます」
課は報告に目を通し、刻な顔で頷いた。
「分かった。令状を請求しろ。直ちに始めろ」
翌朝、たい空気が漂う取調に、静が座っていた。
背筋は伸びていたが、その瞳はげに揺れていた。藤は向かいの子を引き、分い類の束を机のに置いた。
「静さん。6、嫁の美さんに何があったんですか。もう芝居は終わりにしましょう」
静は腕を組み、毒づくように答えた。
「あの子が借をして、勝に命を絶ったんだよ。
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私たちは怖くて、ただ埋めてやっただけさ。んだを憫にって埋めてやったのが罪になるのかい」
「自分で命を絶った?」
藤は、鑑識から届いた解剖結果を静の先へ突きつけた。
「蓋骨の陥没。鈍器でく殴られた痕です」
写真を見た静の目が激しく揺した。
けれど彼女は、最までしらを切ろうとした。
「らないよ。私は何もらない。あの子がどこで殴られて帰ってきたかなんて、るもんですか」
藤は半を乗りし、い声で言った。
「静さん。美さんはで殴られて帰ってきたんじゃない。ので殴られたんですよ。それも、ごくなにね」
静は線をそらし、を固く閉ざした。
息が詰まるような沈黙が、取調を満たしていった。
方、豆腐の隣にある乾物の女将、鈴恵子は、の敷居をまたぐこともできずにち尽くしていた。
黄い規制線が張られた豆腐の先では、制姿の警官たちが忙しくき交い、記者たちがカメラのフラッシュを焚いていた。
「本当に遺体がたらしいわよ。ボイラーのコンクリートのから」
通りがかりのの声に、恵子の臓がどくんと音をてた。
に持っていた煮干しのざるが震え、にひっくり返った。乾いた魚が面に散らばったが、恵子は拾うことができなかった。
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彼女の線は、警官たちが掘り返しているボイラーに釘付けになっていた。
恵子のので、計の針が6へ戻っていく。
19911116。
あのも、砂りのだった。
のにしては妙にたく、激しいだった。恵子はの片付けを終え、奥の部に布団を敷いて横になっていた。トタン根を叩く音がうるさく、ラジオの音もまともに聞こえなかった。
「嫌な気だね」
布団を首まで引きげ、そう呟いただった。
壁の向こうから、鈍い音が聞こえた。
どん。
い荷物をに叩きつけたような音だった。
恵子は反射にを起こし、壁にを当てた。
音がしたのは、隣の豆腐のボイラーの方だった。
続いて、女性のい鳴が音に混じった。
「きゃあ」
恵子は目を見いた。
違いなく、美の声だった。
その、何かを引きずるような音が聞こえた。
ずり、ずり。
気な摩擦音が、壁を伝ってきた。
「喧嘩でもしてるのかしら」
恵子は窓へづき、カーテンをしだけけてを覗いた。嵐のようなが吹き荒れる豆腐の裏は、漆黒のに沈んでいた。
けれど暗ので、誰かがい声で囁くのが聞こえた。
「くしろ。ボイラーの方へ」
男の声なのか女の声なのか判別できなかったが、らかに1ではなかった。
恵子は急に恐ろしくなり、慌ててカーテンを閉めた。
そのまま布団のへ潜り込み、臓の音を聞きながら朝を待った。
「したことじゃない。夫婦喧嘩がしきくなっただけよ」