"8年目の生マイク" 第6話
何も眠っていないような顔で、目のには濃いくまが浮かんでいる。髪はべたつき、指先は落ち着きなく震えていた。
は顎で向かいの子を示した。
「座りなさい、鈴さん」
匠は周囲の顔をうかがいながら、子へ腰をろした。膝のに置いた両をこすりわせ、線をに落とす。
は取引記録を目のに置いた。
「19993、おばである本田さゆりさんから1000万円の送を受けていますね」
匠の顔が、瞬で気に変わった。
「それは……借りたんです。で商売がうまくいったら、必ず返す約束で」
「返したんですか」
匠は消え入りそうな声で答えた。
「まだ、返せていません」
は子をしへ引き寄せた。
「おばさんが失踪する直にそれだけのを受け取った。もしかして、関係があるんじゃないですか。をせと脅したとか」
匠は顔をげ、慌てて首を振った。
「違います。誤解です。そのおと、おばさんの失踪は本当に何の関係もありません。おばさんが、かわいそうだと言って、自由に使えと渡してくれたんです」
「それを証できますか。借用は」
匠は唇を噛みしめた。
返す言葉がなく、古いテーブルの角だけを見つめていた。
佐藤が8の捜査記録を広げた。
「鈴さん、あなたのアリバイもし妙です。失踪当のけ方3まで、元の雀荘にいたことは確認されています。
広告
友たちと徹夜で麻雀を打っていたんですね」
匠はすぐに頷いた。
「はい。そうです。麻雀していました」
「でも、その、け方6までの記録が抜けています。その3、どこで何をしていましたか」
匠の指がジーンズの膝をく握った。
「に……帰りました。疲れていたので寝ようと」
は匠の目をまっすぐ見た。
「鈴さん、今、何か隠していることがありますね」
匠の瞳が揺れた。
何か言おうとしてをきかけたが、すぐに閉ざした。
はいため息をついた。
「今はここまでにします。いしたことがあれば、いつでも連絡してください。その代わり、携帯の源は切らないように」
匠は逃げるように席をち、ふらつく取りで部をていった。
その夜、と佐藤は再び恵子のを訪ねた。
は単刀直入に尋ねた。
「本田さゆりさんが、、保険の話をされたことはありませんか」
恵子の目が丸くなった。
「刑事さん、すごいわね。どうしてそれをっているんですか」
「話されたことがあるんですね」
恵子はティーカップを置き、声を潜めた。
「ええ。失踪する1ヶくらいだったといます。さゆりが、それとなく言ったんです。保険に1つ入ったんだけど、夫には絶対に内緒にしているって」
佐藤が素く帳にき止める。
「命保険ですか」
「詳しいことは分かりません。
広告
ただ、万がのためにかけておいたって。々、子どもたちの助けになればとって、と言っていました」
翌朝、佐藤は本田さゆり名義の保険加入歴を照会した。
画面を見た瞬、がいた。
「班、これ、かなりです」
はコップのコーヒーを持ってづいた。
画面には、199810に加入された1000万円の命保険が表示されていた。
佐藤が画面を指差す。
「受取が、夫の本田正弘ではありません。息子と娘、2の子どもたちになっています」
は机に腰をかけ、く考え込んだ。
「夫に内緒でを甥に渡し、保険の受取も夫ではなく子どもにした。正弘はこの事実をっていたのか」
佐藤は鏡をかけ直した。
「犯のが2つに分かれますね。1000万円でりが爆発したか。保険を狙ったのに、自分が受取ではなかったか」
は指でテーブルを叩いた。
「両方の能性がある。両方からつつくぞ」
3旬、方の社会面に見しがた。
「警察、8の宇都宮主婦失踪事件の全面再捜査に着」
その記事がた翌、警察庁のサイバー相談の掲示板に、また匿名の報提供が届いた。
「あののけ方の夫の通話履歴を、もう度確認してください」
はそれを見るなり、席を蹴ってちがった。
通話記録。
そこに、まだ誰も見落としているものがある。
彼は埃をかぶったファイルを再び取りし、さゆりの通話履歴を机に広げた。
蛍灯の、数字の列を何も追った。