"8年目の生マイク" 第2話
この男の胸元につけられたさなピンマイクが、8眠っていた真実の扉をけることになるとは。
番組は予定通りにんでいた。
役は、当の警察捜査について質問した。
「当の捜査は、どのようにめられたのでしょうか」
正弘は唇を軽く噛み、首を横に振った。
「最初は、単なると見られました。女性がをたのだから、自ら姿を消したのではないかと。私は絶対に違う、妻はそんなことをするではないと何度も訴えたのですが」
そこで言葉を止め、彼は再びハンカチで目元を押さえた。
「当はに防犯カメラもくなかった代ですから、結局、事件は未解決のまま残されました。ですが、私は諦めていません。いつか必ず帰ってくると信じていますから」
収録が30分ほどんだ頃、役はディレクターのサインを受け取り、腕計を確認した。
「ここでし休憩を挟んで、再いたします。10分にまたお会いしましょう」
スタジオのメイン照が消えた。
補助照だけが残り、るかった空は気に暗くなった。カメラの赤いランプも消え、スタッフたちはそれぞれの持ちで緊張を解いた。
正弘は席からちがり、役に丁寧に声をかけた。
「しお洗いにってまいります」
「ええ、どうぞってらっしゃいませ」
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正弘は軽く会釈し、スタジオの扉を押して廊へた。
彼の胸元には、豆粒ほどのさなピンマイクがついたままだった。赤いランプは、まださく点滅していた。
休憩がかったせいか、音声担当者はマイクの源を切ることをうっかり忘れていた。
同じ刻、調の隅では、入社2目の若ディレクター、伊藤由がヘッドホンをつけたままモニターを見ていた。
28歳の由は、先輩たちの指示に従い、音声レベルを確認していた。スタジオ音声は落ち着いており、きな異常はない。彼女は械にボリュームのつまみを触り、次の再に備えていた。
その、ヘッドホンの向こうから、コツ、コツ、という革靴の音が聞こえた。
廊を歩く正弘の音だった。
由は習慣にボリュームをしげ、ノイズの無を確かめた。
次の瞬、くたいつぶやきが、彼女の元へ流れ込んできた。
「さゆり……」
由の指が止まった。
そして、さらに声が続いた。
「さゆり、おがあの、さえ閉じていれば……俺もあんなことまではしなかった。分かってるよな」
由のから、持っていた類の束がへ落ちた。
ばさりという音が調に響いたが、彼女はけなかった。ヘッドホンをつけたまま、誰もいない廊を映すモニターをい入るように見つめた。
画面には、ただ暗い廊が映っているだけだった。
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だが音声には、確かに本田正弘の声が残っていた。
収録はその、何事もなかったように再された。
正弘は最まで涙まじりの訴えで聴者のを揺さぶった。番組の最には、再びカメラのでをげ、妻の帰りを待ち続ける夫として完璧に振るった。
スタッフたちが拍をしながら「お疲れ様でした」と声をかけると、正弘はいつもの温な笑みを浮かべた。
「本はありがとうございました」
そう言って、丁寧にお辞儀をした。
そのの夜、由は全員が退社した、こっそりと調へ戻った。
部は静まり返っていた。モニターの源は落ち、材のさなランプだけが暗のでっている。由は震えるでパソコンを起し、保されていた音声ファイルを探した。
あった。
休憩の音声データ。
彼女はさな128MBのUSBメモリを差し込み、問題の部分をコピーした。は何度も滑り、呼吸は浅くなっていた。
コピーが終わると、由はUSBメモリをバッグの奥くへ押し込み、逃げるように放送局をにした。
そのの3、彼女は夜、気を消すことができなかった。
目を閉じるたびに、あの声が元でよみがえる。
「さえ閉じていれば……俺もあんなことまではしなかった」
2007217の夜、由は決した。
宇都宮警察署のホームページをき、匿名の報提供欄に震える指でい文章を打ち込んだ。
「8の本田さゆり失踪事件について、必ず確認すべき音声ファイルがあります」