"317号室の隠し壁" 第5話
髪の部には毛根が残っています。自然に抜けたものではなく、引き抜かれた能性がい。爪はきれいに切られています。標準な爪切りを使ったのでしょう」
佐藤は証拠袋を見つめた。
犯は彼女たちをただ消したのではない。
記録した。
保した。
自分の為を、から見返すために残した。
「夜勤のフロント係を急ぎましょう」
佐藤はに言った。
「それから1996から1997にかけて、ホテルで働いていた全員。改装に関わった作業員、業者、所者、管理者。全員を洗う」
「遺体の所もです」
はい声で言った。
佐藤はうなずいた。
その点で、もはやつだけは疑いようがなかった。
3は自分ので姿を消したのではない。
彼女たちは、ホテル・スカーレットローズので命を奪われた。
そしてその痕跡を、誰かが壁の奥に封じた。
夜勤のフロント係、治は、郊の古い団にんでいた。
佐藤とが訪ねると、扉をけたのは60代半の男だった。痩せた頬と、い孤独に削られたような顔をしている。彼の目は、すぐに2の警察帳へ向かった。
その瞬、表に諦めのようなものが浮かんだ。
「いつか誰かが来るとっていた」
はかすれた声で言った。
彼はなぜ来たのかを尋ねなかった。ただ横にどき、2を部に入れた。
内は驚くほど理されていた。
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だが、空気には古い煙と孤の匂いがこびりついていた。
佐藤が名を確認すると、はリクライニングチェアに腰を沈めた。
「1996915。午1147分、私は3の客乗務員をチェックインさせた。朝までに彼女たちは消えていた。私はそれから毎、あの夜と緒にきている」
佐藤は声を落とした。
「当の供述では、異常はなかったと話しています」
はしばらく沈黙した。
テレビは音を消したまま、温泉の映像を流していた。
「嘘ではない」
彼はようやく言った。
「彼女たちをその見なかったのは本当だ。ただ、あのホテルに問題があることは、あの夜以からっていた」
「問題とは」
「音だ」
は両を組み、膝ので震えを隠そうとした。
「夜になると、誰も呼んでいないのにエレベーターがいた。防犯モニターを見ると空なのに、ケーブルのきしむ音だけが聞こえた。3階はいつも寒かった。でも、あの廊だけ凍庫みたいだった」
「報告しましたか」
「した。だが経営者は気にしなかった」
は苦い笑みを浮かべた。
「当の所者は黒田レイという男だった。ホテルがをむ限り、何も問題にしなかった」
佐藤はメモした。
「その夜、に誰かを見ましたか」
「フロントは私だけだった。メンテナンス担当の加藤郎が勤務のはずだったが、ほとんど姿を見なかった。
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にいると言っていたが、酒をんで寝ていたのだとう」
はそこで顔をげた。
「ただ、改装に度、妙な男を見た」
佐藤のが止まった。
「1997の改装のですか」
「私物を取りに戻っただ。3階は壁が剥がされ、配線がむきしになっていた。そこで、作業員に見えない男がいた。作業着を着ていたが、サイズがっていなかった。汚れているはずなのに妙に清潔だった」
「顔は」
「背がく、痩せていて、黒髪。40代くらいに見えた。目が暗かった。私を見て、笑った」
は唇を湿らせた。
「友好な笑顔ではない。私がらない何かを、向こうだけがっているような笑顔だった」
佐藤は隠し空の写真を見せた。
はそれを見た瞬、顔を失った。
「この所に、あの男がいた能性があります」
佐藤が言うと、はさくうなずいた。
「そうかもしれない。あの男は、壁を見つめていた。まるで、そこに何を入れるかをもうっているみたいに」
佐藤とがちがると、は林と同じように佐藤の腕をつかんだ。
「刑事さん、気をつけてくれ」
彼の声は震えていた。
「あのホテルが飢えていたと言ったら、笑うかもしれない。でも違う。あのホテルを飢えさせていたのは、だ」
次に佐藤たちが訪ねたのは、介護施設で暮らす加藤郎だった。
加藤は70代の痩せた男で、脳卒の遺症で顔の片側がしがっていた。
だが目ははっきりしていた。佐藤が名乗ると、彼はすぐに言った。