"8年目の松林" 第6話
窓際には埃が積もり、机のの本はしずつあせていった。
5ほど経った頃、鈴は病を得た。糖尿病だった。体調が悪くなり、事もきちんとできなくなった。美子の部にも徐々に埃が積もっていった。
それでも鈴は、部を片付けなかった。
「戻ってきたに、何もなかったらだから」
所のにそう言ったことがある。
保護者の田は、で農業を続けていた。息子は学へ学し、田のは表向きには平凡な活を送っているように見えた。
しかし、事件のから田の様子は変わっていた。
酒をみ始めたのである。
以はほとんどまなかった田が、夜になるとの集会所に座り、1で焼酎の瓶を傾けるようになった。
「田さん、最よくむな」
所のが声をかけると、田は赤くなった目で睨み返した。
「放っておいてくれ」
酔うと、田は独り言を言った。何を言っているのかは聞き取れなかった。ただ、ぶつぶつと何かを呟き、々顔を歪めた。
「俺のせいじゃない」
「らなかった」
そんな言葉を聞いた者もいた。
しかし誰も、そのを理解できなかった。
の々は田が何かっているようだと囁いた。だが、誰も直接尋ねなかった。田の荒れた様子にづくのが怖かったからでもあり、過ぎた事件を掘り返したくなかったからでもあった。
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8が流れた。
平成2になった。
松本美子の教え子たちは、もう学を卒業し、にんだ者もいれば、社会にた者もいた。かつて51組の教で美子の授業を受けていた子どもたちは、背も伸び、顔つきも変わっていた。
子どもだった彼らのでも、美子の記憶はしずつれていた。
先の顔をはっきりいせない者もいた。
ただ、優しい先だったという覚だけが、胸の奥に残っていた。
美子の両親もを取った。
父親は病に倒れ、娘を見つけられないまま世をった。母親はまだきていたが、気力を失っていた。それでも々、学へ話をかけた。
「何か、娘のことで分かったことはありませんか」
受話器の向こうでそう尋ねる声は、々くなっていった。
誰も答えることができなかった。
学はしい建物へ変わった。古い造舎は取り壊され、3階建ての舎が建てられた。職員もしくなり、美子が座っていた机も消えた。
もしずつ変わっていった。
舗装が増え、バスの本数も増え、しい商もできた。若いたちはをるようになり、から来た々も増えた。
過の事件をらないが増えていった。
しかし田だけは、変わらず酒をんでいた。
毎晩のように集会所に座り、焼酎の瓶を傾けた。顔はやつれ、体も痩せていった。
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息子が配して声をかけても、田は聞かなかった。
「もうやめたらどうだよ」
息子がそう言うと、田はを振り払った。
「うるさい」
それ以、誰も踏み込めなかった。
平成2、松本美子の教え子たちが集まることになった。
学卒業、初めての同窓会だった。
会はの集会所。参加者は20名ほど。になった元児童たちは、酒や茶をみながら昔話を交わした。
最初はるい話ばかりだった。
運会のこと。
で嫌いだった献。
庭の隅にあった古い遊具。
そして誰かが、ふとにした。
「松本先、優しかったよな」
その瞬、の空気がし変わった。
誰かがグラスを置いた。
誰かが目を伏せた。
「突然いなくなったんだよな」
「結局、見つからなかったんだっけ」
その言葉をきっかけに、8の記憶が1、また1と蘇り始めた。
学級委員だったが、ゆっくりをいた。
「俺、あの、おかしなものを見たんだ」
皆の線がに集まった。
はし迷うように元を見つめてから続けた。
「昼休みにのを通ったんだ。そしたらから声が聞こえた。男の声と女の声だった。女のは泣いていたとう」
「松本先?」
誰かが尋ねた。
は頷いた。
「今えば、たぶんそうだった。でも当は子どもだったし、何か分からなかった。ただ通り過ぎただけだった」
別の元徒、伊藤も記憶をいした。
「あのの午4頃、学裏の松林のくにった。友達と遊びにったんだ。