"8年目の松林" 第3話
いチョークの音が、朝の静かな教に響いた。
1目の国語の授業も普通にんだ。美子は教科を持って教を歩き、を挙げた児童を指名した。
「はい、さん。読んでみて」
はし緊張しながらちがり、教科を読み始めた。美子は柔らかい表で頷いていた。
しかし2目が始まる直、おかしなことが起きた。
美子が突然、教をて職員へ向かったのだ。
「先、どうしたの?」
1の児童が尋ねると、美子は振り返って微笑んだ。
「すぐ戻るから、みんなは席についていてね」
職員にいた田教諭は、美子が話を受ける姿を見ていた。
通話はくなかった。2分ほどだった。
美子は受話器をに当て、最初は普通に相槌を打っていた。けれど、途から表が固まったという。受話器を置いたも、しばらくそのにっていた。
田教諭が声をかけた。
「松本先、誰から?」
美子ははっとしたように顔をげた。
「何でもありません」
そう言って、すぐに教へ戻っていった。
田教諭はそのろ姿を見送りながら、どこか自然だとじた。しかし授業だったこともあり、それ以追及しなかった。
2目の授業は普通にんだ。
午の授業が終わり、昼休みになった。普段なら美子は徒たちと緒にをべる。教のろに子を持ってきて、子どもたちと同じ献をべながら話を聞くのが課だった。
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けれどその、美子はへかず、教に残っていた。
机に座り、何かを考えているようだった。のがづいても、弁当箱をすこともなく、ただ窓のを見ていた。
何かの徒が配してづいた。
「先、丈夫?」
美子は顔をげ、慌てて笑った。
「丈夫よ。し考えごとをしていただけ」
けれど、その笑顔はぎこちなかった。子どもたちはにそう話した。
午1頃、佐藤教が美子を呼んだ。
呼びされたのは教ではなく、だった。その、は張で学にいない。空いているに、美子を呼んだのである。
廊で声をかけられた美子は、瞬だけを止めた。
「今でしょうか」
「すぐ終わる」
佐藤教はく答えた。
美子はさく頷き、へ入った。
の扉が閉まると、廊には急に静けさが戻った。
10分ほど、美子は部からてきた。
顔が青かった。
廊にいた教師が「何かあったの?」と尋ねたが、美子は何も言わず、首を横に振っただけだった。
午の授業は5目まであった。美子の授業は4目までで、5目はの科目の教師が入った。その、美子は職員に座って類を理していた。
をめくるはいつも通りに見えたが、何度も同じページを見つめていたと、に同僚教師が話している。
午330分頃、徒たちがした。
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庭には子どもたちの声が響き、ランドセルを揺らしながらへ向かう姿が見えた。美子は鞄をまとめながら、田教諭に「先に帰ります」と言った。
普段なら美子は遅くまで学に残っていた。宿題を見ることもあれば、翌の授業準備をすることもあった。だからそのはらかに違っていた。
田教諭は机のから顔をげた。
「どこかへくの?」
美子は鞄を抱えたまま、しを置いた。
「ちょっと用事があるので」
それ以、どこへくのかは言わなかった。
午4頃、の入にあるバスで美子を見たというがいた。の駐に入りしていた役関係者だった。美子はバスを待っているように見えたという。
そのが挨拶をしたが、美子は気づかなかった。い考えに沈んでいるようだったと語っている。
しかし、同じ帯に別の証言もあった。
学裏の松林付で美子を見たという保護者がいた。
田だった。
田は、美子が誰かと話をしていたと言った。相は男性のようだった。しかし顔は見ていない。距がく、はっきり分からなかったと説した。
その夜、美子は宿に帰ってこなかった。
鈴は最初、して配しなかった。朝、美子が「遅くなるかもしれない」と言っていたからである。学事の準備で遅くなっているのだろうとった。
しかし夜10を過ぎても連絡はなかった。