"8年目の松林" 第2話
しかし最、鈴は宿代の値げを求めるようになっていた。物価ががり、活が苦しいという理由だった。美子の料では負担になる額だったが、に来たばかりの彼女には簡単に断ることができなかった。
「しだけ考えさせてください」
美子がそう言うと、鈴は申し訳なさそうに頷いた。
「悪いね。でも私も余裕がなくてね」
美子は部に戻り、机ので計簿をいた。数字を見つめながら、ため息をついた。
保護者のにも、美子を特別に気に入るたちがいた。その1が田だった。学級委員の息子を持つ農で、のでは古くからの柄だった。
田はお盆の期、美子に米1俵を贈り物として持ってきた。
「先、うちの田んぼで取れた米です。べてください」
美子は驚き、両をで揃えた。
「お気持ちはありがたいのですが、個にいただくことはできません」
「慮せんでええ。では普通のことじゃ」
「でも、学の決まりもありますので」
美子は丁寧に断った。
田はその、しだけ顔をばらせた。持ってきた米袋を抱え直し、無言で帰っていった。
それ以、田は美子に会っても以のように気持ちよく挨拶をしなくなった。学事で顔をわせても、目をそらす。美子はそのたびに胸がくなった。
10旬、葉がづき始める頃だった。
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そのの朝礼で、が全徒ので美子を褒めた。
「松本先は、を持って子どもたちに向きっておられます。皆さんも先のように、毎を切にしましょう」
体育館に並んだ児童たちの線が斉に美子へ向いた。美子は頬を赤くし、恥ずかしそうにをげた。
昼休み、田教諭が廊の窓辺で美子にたく言った。
「あまり目たないほうがいいわよ」
美子は瞬、言葉のが分からなかった。
「え?」
「ここは都会の学とは違うの。若い先が1で張り切りすぎると、周りがやりにくくなることもあるの」
田教諭はそう言い残し、職員へ戻っていった。
放課になると、今度は佐藤教が美子を呼んだ。
「松本先、し話がある。へ来なさい」
はその張だった。空いているに呼ばれることに、美子はさなを覚えた。
「職員ではだめでしょうか」
「個に話したいことがある」
佐藤教の声は静かだったが、断りにくい響きがあった。
美子は胸の奥にたいものを抱えながら、へ向かった。
その夕方、宿に帰る途で田と会った。田は美子を見ても顔を背けた。
細いに吹くが、稲刈りの田んぼを渡っていく。美子は鞄を握り直し、うつむいて歩いた。
このさなでの活は、っていたよりも複雑だった。
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しかし、教で聞く子どもたちの笑い声だけが、彼女を支えていた。
その夜、美子は記帳をいた。
辛いけれど耐えられる。子どもたちがいて幸せだ。も笑顔で学にく。
震える文字でそうき終えると、美子はペンを置き、窓のを見た。
の向こうに、いが浮かんでいた。
昭571012、曜。
そのも美子は普段通り学に向かう準備をしていた。
朝730分頃、宿の主である鈴が玄関先で彼女を見送った。美子はいブラウスに黒いスカートを着て、髪をきちんとまとめていた。いつもよりし急いでいるように見えたと、に鈴は証言している。
「今は遅くなるかもしれません」
美子は靴を履きながらそう言った。
「学事の準備?」
鈴が尋ねると、美子はさく頷いた。
「ええ。しやることがあるので」
玄関をる、美子は度だけ振り返って会釈した。鈴はその背を見送りながら、いつもよりし顔が悪いようにじた。しかしくは考えなかった。
午8頃、学の用務員が美子が職員に入る姿を見ている。普段と変わらず、鞄を持って、軽くをげながら入ってきたという。
朝の会の、美子は51組の教にいた。
「おはようございます」
教のにつと、児童たちの声が揃って返ってきた。
「おはようございます」
徒たちは、先が普段と全く同じだったと記憶していた。笑顔で席を取り、今やることを黒板にいた。