"楽譜鞄の13年" 第6話
最初に話を聞いたのは、美の学同期だった田里美。現は41歳のピアノ講師である。
が尋ねると、田は慎に言葉を選んだ。
「美さんとさやかさんの関係ですか。表面は普通の姉妹でした。でも、はし複雑だったといます」
「どういうですか」
田はし線を落とした。
「美は、さやかを羨ましがっていました。妹は才で、姉は平凡。そう見られるのが苦しかったんだといます」
「嫉妬はかったですか」
「何度か、私に愚痴をこぼしたことがあります。どんなに練習しても妹にはなれない。親も教授も、さやかばかり見ているって」
「19915頃の様子は」
田は頷いた。
「よくありませんでした。さやかさんが国際コンクールにると聞いてから、さらに塞ぎ込んでいました。お酒も増えていました」
この証言は、美にがあった能性を示していた。
続いて刑事たちは、本健造教授にも話を聞いた。13が経ち、教授は71歳になっていたが、さやかのことははっきり覚えていた。
「松本美さんを覚えていますか」
本教授は静かに頷いた。
「覚えています。真面目な学でした。しかし、才能は妹とは比べものにならなかった」
「2の関係は」
教授はしばらく考えた。
「表面は問題なさそうに見えました。ただ、1度だけ気になる面を見たことがあります」
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「どんな面ですか」
「19914頃だったといます。廊で2が話していました。さやかさんが何か言うと、美さんの顔が張って、そのまま振り返ってっていったんです」
会話の内容は聞こえなかった。
だが、姉妹のに見えない亀裂があったことは確かだった。
325。
科学捜査研究所から追加分析の結果が届いた。
音楽学部裏の排溝周辺を再調査したところ、コンクリート構造物の隙から、微細な血液反応が検されたのである。13のが流れていたが、が入りにくい密閉された部分に痕跡が残っていた。
血液型はA型と推定された。
松本さやかの血液型もA型だった。
は報告をにしたまま、しばらく黙っていた。
あの所で、何かが起きた。
それはもう、単なる姉妹喧嘩では済まされなかった。
328、美は再び召喚された。
は机のに報告を置いた。
「建物の裏から血液が発見されました」
美の顔が青ざめた。
「それが、さやかのものだという証拠はないじゃないですか」
「A型です。妹さんと同じ血液型です」
美は震え始めた。
「私はりません。本当にりません」
「あのの夕方、正確に何があったんですか」
美は泣きした。
「喧嘩したんです。それだけです」
「喧嘩の過程で、妹さんは怪をしましたか」
「していません」
「では、なぜ血液があるんですか」
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美は答えられなかった。
は静かに言った。
「今、協力しなければ、あなたは最もい容疑者になります」
その言葉に、美は崩れ落ちた。
「私が……私が、うっかり押したんです」
取調に沈黙が落ちた。
は、ゆっくり尋ねた。
「どのように押したんですか」
美は震える声で話し始めた。
「あのの夕方、私は腹がっていました。さやかはコンクールの話ばかりしていました。自分がどれだけ緊張しているか、練習がどれだけ変か、そればかりで」
「あなたは何と言いましたか」
「あなただけが変なの。私がどうきているかっているのって、鳴りました」
その、さやかはたく美を見たという。
そして、こう言った。
「お姉ちゃんは才能がないから分からないとう」
美は涙を流した。
「気づいたら、さやかを押していました。本当に、ただ肩を押しただけなんです」
さやかはよろめき、ろの排溝のコンクリートの段差でを滑らせ、のひらをすりむいた。
「ひどい怪ではありませんでした。血はました。でも、刻ではなかったんです」
「そのは」
「さやかはちがって、私を見ました。とてもたい目でした。そして何も言わずに、裏の方へ歩いていきました」
美は、そこで自分も反対方向へったと語った。
それが最だと主張した。
だがには、まだ何かが隠されているようにえた。
美の証言をもとに、捜査の方向は再び変わった。
もし、さやかが建物裏で怪をした、裏の方へ歩いていったのなら、その先を調べなければならない。