"楽譜鞄の13年" 第3話
僕たちので、誰も彼女に叶わなかった」
「嫉妬しているはいましたか」
林は苦笑した。
「当然ありました。でも、直接何か言うはいませんでした。みんな実力の差を認めていましたから」
その言葉を聞きながら、田刑事はメモを取った。
才能がある者は賞賛される。
しかし同に、周囲の羨望と嫉妬も背負う。
そのことを、田は捜査経験からっていた。
午6、刑事たちは松本を訪ねた。
世田区桜町にある古い集宅の2階。玄関をけると、狭いリビングがあり、母の恵が目を赤く腫らしてっていた。父の孝志はソファに座り、黙って話を見つめていた。
「お嬢さんの部を見せていただけますか」
田が尋ねると、両親は無言で頷いた。
さやかの部は6畳ほどのさな空だった。机とクローゼット、さなベッド。壁にはベートーベンやショパンの肖像ポスターがびっしり貼られていた。
クローゼットのには類が然と並び、引きしには通帳と印鑑がそのまま残っていた。パスポートも机の奥に置かれていた。
田はそれを確認し、さく呟いた。
「計画されたではなさそうです」
机の引きしからは、記帳が1冊見つかった。両親の許を得て、田はページをいた。
最の付は512だった。
「コンクールまであと1かもない。
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指が言うことを聞かない。なぜこんなにうまくいかないんだろう。もっと頑張らなくちゃ」
次のページは空だった。
田は記をの方からゆっくりめくった。内容のほとんどは練習記録だった。
「35。8練習。ショパン、ノクターン。ペダル調」
「318。本教授にレッスンを受ける。首の角度、修正が必」
「42。から本格にコンクール曲の練習」
な文章は、ほとんどなかった。
ただ、429のページにだけ、い言葉が残されていた。
「とても辛い。でも諦められない。このコンクールが私のを変える」
田は記を閉じた。
自ら姿を消す決を示すような記述は見つからなかった。
「最、誰かと論したことはありますか」
母の恵は首を横に振った。
「ありません。さやかは学から帰ると、ご飯をべて、寝るだけでした。友達に会いにくこともほとんどありません」
「ご族ので、さやかさんと何か葛藤があった方は」
その質問に、恵はしためらった。
「の娘がもう1います。さやかの姉です」
「お姉さんも学ですか」
「はい。同じ学の4です」
田はメモを取った。
「今、どちらに」
「自分の部にいます」
恵が奥の部の扉を叩いた。しがあって、扉がいた。
てきたのは、28歳の女性だった。
松本美。
さやかの姉である。
美は刑事を見ると、すぐに線をそらした。
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顔は悪く、肩に力が入っていた。
「妹さんと最に話したのはいつですか」
田が尋ねると、美はさく息を吸った。
「昨です。514の夕方でした」
「どんな話をしましたか」
「したことではありません。ただ、練習を頑張ってねって言っただけです」
「妹さんの様子は」
「いつも通り静かでした」
田は美の表を観察した。何か居悪そうには見えたが、その点でく疑う材料はなかった。
「妹さんがきそうな所をごじですか」
「分かりません」
美はく答えると、再び部へ戻っていった。
その夜、刑事たちは学周辺のワンルームや宿を回った。友宅に泊まっている能性を確認するためだった。しかし、誰もさやかを見ていなかった。
翌、516。
捜査は本格化した。
学周辺の商に、さやかの写真が配られた。定、文具、コンビニ、喫茶。刑事たちは1軒ずつ歩いて尋ねた。
「この学を、514の夕方に見かけませんでしたか」
ほとんどのは首を横に振った。
しかし、学のたこ焼きで、1つの証言が得られた。
主の井は56歳の女性だった。写真を見ると、すぐに頷いた。
「この子、っていますよ。たまにたこ焼きを買っていく子です」
「514の夕方に見ましたか」
「はい。6し過ぎだったといます。たこ焼きを1パック買っていきました」
田の表が変わった。
「1でしたか」
「はい、1でした」
「どちらへ」
「バスの方に歩いてきました」
刑事たちはすぐにバス周辺で聞き込みをった。