"深淵に沈んだ家族" 第3話
途でがりたくなったら、慮なく言ってください」
私はうなずいたが、声はなかった。
作業着姿の男がづいてきた。
背がく、焼けした顔。にはがついていた。
「川崎輔です。ご族の方ですね」
私は彼のを握った。
「あなたが見つけてくれたんですね」
川崎は険しい顔でうなずいた。
「測量を15やっていますが、あんなものは初めて見ました」
彼の案内で、私たちは森のを約200m歩いた。の幹にはオレンジのスプレーで印がつけられている。丘を越えた、目のに巨な穴が現れた。
面にいた傷のようだった。
投器が周囲に設置され、暗い底を照らしていた。そのみに、があった。
いや、だったものが積みなっていた。
セダン、軽トラック、ミニバン。錆びついた属の骸骨が、使える空すべてを埋めるように層を成している。比較しく見えるものもあれば、原型すら崩れかけたものもあった。
私はくのにをついた。
がくなっていた。
「なんてことだ……」
黒田警部が静かに言った。
「黄のホンダは、あちらの角です。半分ほどがったところにあります」
私は陥没穴の縁に沿って歩いた。
そして、見つけた。
20経っても、私はすぐに分かった。
独特の部窓の形。
父がスーパーの買い物カートでつけたドアのさなへこみ。
広告
キャンプ用品を載せるはずだったルーフラック。
族のが、ねじれた属の墓に埋もれていた。
「あれです」
声はかすれ、まるでのもののようだった。
「あれが、族のです」
黒田警部はメモ帳にき込んだ。
その、鑑識の女性技術者が駆け寄ってきた。
「黒田警部、見ていただきたいものがあります」
彼女は陥没穴のに見える青い軽トラックを指した。いストライプの入っただった。
「部分に読めたナンバーを照しました。1999、福島県猪苗代付のキャンプから盗難届がされていたです。所者のは、今も方のままです」
黒田警部の表が暗くなった。
「夫婦と子ども2。キャンプサイトには事と類が残されたまま、族とだけが消えた事件です」
私は底の両を見つめた。
これは、私の族だけの話ではなかった。
何もの族が痕跡もなく姿を消し、最にこの岩の森の底にたどり着いていた。
やがて黒田警部と鑑識員たちは、ロープとハーネスを使って穴のへりた。私はから見ていた。彼女たちのヘッドランプのが、錆びたのを蛍のように揺れている。
しばらくして、黒田警部が私を見げた。
「純平さん、見ていただきたいものがあります。りられますか」
考えるだけで胃が縮んだ。
それでも私はうなずいた。
広告
ここまで来て、逃げるわけにはいかなかった。
鑑識チームにハーネスを取り付けられ、私はゆっくりと穴の底へりた。
属と錆の定なに靴が触れた瞬、腐敗と湿ったの匂いがを刺した。
黒田警部は、族のホンダの部窓を照らしていた。
「これを」
私はづき、息を呑んだ。
ガラスに、文字が引っかかれていた。
鍵か何か鋭いもので必に刻まれたような、揃いな文字。
助けて
膝から力が抜けた。
20、事故だったのか、だったのか、どこかできているのかと考え続けてきた。
だが、答えはそこにあった。
族は事故でんだのではない。
連れられ、何が起きているかを理解するだけのがあった。
そして誰かが、最の力で助けを求めていた。
黒田警部は、懐灯で部窓の文字を丁寧に照らした。
「誰がいたかは、今は分かりません」
私は震える声で尋ねた。
「母でしょうか。サラでしょうか。それとも……」
言葉が続かなかった。
エナ。
まださかった妹の名をにするだけで、胸が詰まった。
「傷跡の状態から見て、がここへ運ばれる、あるいは直に刻まれた能性があります」
私はのトランクにを置いた。
錆とに覆われていたが、母が貼った族ステッカーの輪郭がかすかに残っていた。両親と3の子どもがをつないでいる絵柄だ。
母はどこかのサービスエリアでそれを買い、「がもっと族らしく見えるでしょう」と笑っていた。