"雪夜の妻" 第18話
「警備員、こいつをつまみせ。せっかくの素らしいパーティーが、悪臭のせいで台無しだ」
田社のたい指示で、屈な警備員たちが健の腕をくひねりげました。
「待ってくれ。お願いです。を、を貸してください。助けてくれ!」
健はにいつくばりながら、見えないおにを伸ばしていました。
私はその姿を、ガラス越しに静かな目で見つめていました。
りもしみも、同もありません。
ただ、彼が自分の見栄と欲に押し潰されていく過程を、最までしっかりと見届けていました。
その、ホールの照がふっと落ち、ステージのだけに眩しいスポットライトが当たりました。
マイクを持った司会者が、厳かな声でアナウンスを始めました。
「皆様、変お待たせいたしました。本はグループのたな歴史の幕けとなるです。これより会より皆様にご挨拶を申しげます」
その言葉に、会はを打ったように静まり返りました。
にいつくばっていた健も、その声に反応して顔をげました。
「グループ……」
健がかすれた声で呟くのが、私には分かりました。
彼はグループこそが自分への支援を打ち切り、会社を潰した張本だとっています。
だからこそ、ここで会に直接泣きつけば何か変わるかもしれない。
広告
そんな浅はかでれな期待が、彼の顔に浮かんでいました。
「お待たせ、由美。さあ、きなさい」
祖父が私の背を優しく押してくれました。
「はい。ってまいります」
私はさく頷き、控のドアを静かにけました。
真のドレスの裾を揺らしながら、ゆっくりとステージへ向かって歩きします。
招待客たちが私にを譲るように、に分かれていきます。
そのには、先ほど健をたく払った田社もいました。彼は私を見るとくをげ、敬に満ちた拍を送ってくれました。
私は歩歩、確かな取りでステージの階段を登りました。
そしてマイクのにち、ゆっくりと会全体を見渡しました。
眩しいので、私の線は1点で止まりました。
ステージのすぐ。
警備員に押さえつけられたまま、にへたり込んでいる健の姿がありました。
健は信じられないものを見るような目で、ステージのの私を見げていました。
は半きになり、目は限界まで見かれています。彼の喉がひくひくとき、何かを言おうとしていました。
由美。
なぜおがそこに。
声にはなっていませんでしたが、私にははっきりと分かりました。
彼が必に探し求めていた「貧乏で何の価値もない妻」が、今、彼がいつくばるから見げる最もい所にっているのです。
広告
私は彼に向かって何も言いませんでした。
ただ静かに、たい目で見ろしただけです。
その線が交差した瞬、健の顔から全ての血の気が引いていきました。
私は健から線をし、会の皆様に向けて静かにをきました。
「皆様、本はお集まりいただき、誠にありがとうございます。由美と申します」
私の声がスピーカーを通して、会に響き渡りました。
その名を聞いた瞬、健の体から力が抜け、膝から崩れ落ちる音が静寂のに響きました。
パーティーの、私はホテルの裏側にある静かな控へ案内されました。
の華やかな音楽や笑い声はい扉に遮られ、内にはい沈黙が落ちていました。
そこに連れてこられたのは、健でした。
で汚れた古いスーツのまま、いパイプ子に座らされ、両を膝のに置いています。ドアのには屈な警備員が2、無表でっていました。
健ののは、完全に真っになっているようでした。
先ほどのメインホールでの来事がだったのではないかと、何度も考えているのでしょう。
しかしで汚れた自分のと、よれよれになったスーツが、これが現実であることを残酷に突きつけていました。
「由美……グループの会……」
健はうわ言のようにその言葉を繰り返しました。
自分が今まで見してきた妻。
親の顔もらないな孤児だとっていた女。