"雪夜の妻" 第17話
ホテルのは、のたいのが嘘のように温かく、華やかな百のりに満ちていました。井から吊るされた巨なシャンデリアのが、私の真のドレスを美しく照らします。
「由美、緊張しているか」
隣を歩く祖父が、私の顔を覗き込みながら優しく声をかけてくれました。
「いいえ、おじい様。とても落ち着いています」
私が静かに微笑んで答えると、祖父はしたように頷き、私の腕に軽くを添えました。
私たちは会の奥に用されたVIP専用の控に案内されました。
なのドアをけると、そこには本の経済をかす企業の社たちが集まっていました。
祖父が私を孫であり、会であると紹介すると、皆が驚いた顔をしながらもくをげてくれました。
「由美と申します。本はよろしくお願いいたします」
私がしっかりと挨拶を返すと、彼らの目にははっきりとした敬が浮かびました。
その、控ののメインホールから突然きな鳴り声が聞こえてきました。
「せ! 俺は怪しい者じゃない。ここにいる社たちに事なビジネスの話があるんだ!」
その甲く焦りに満ちた声を聞いた瞬、私はティーカップを持つをぴたりと止めました。
違えようがありません。
健の声でした。
私は音をてずにちがり、控のすりガラス越しにホールの様子を静かに見つめました。
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そこには、信じられないほど惨めな景が広がっていました。
健は、先ほどまで着ていただらけの作業着を脱ぎ捨てていました。そのに着ていたのは、よれよれになった、サイズのわない古いスーツでした。
それは彼が6に独したばかりの頃、私がパートの料をしずつ貯めてプレゼントした物のスーツです。
当は「これを勝負にするよ」と笑っていたのに、健が張りって級ブランドのスーツを買ってからは、1度も袖を通されることはありませんでした。
それを今、こんな壇で引っ張りしてきている。
その滑稽さに、私はさく息を吐きました。
健はホールの警備員に両腕を掴まれながら、必に会のへもうと暴れていました。
「田社、お久しぶりです。佐藤健です。画期なしい事業計画があるんです。ぜひ投資していただけませんか」
彼は以取引のあったIT企業の社に向かって、きの汚いを必に差ししていました。
それは事業計画などという派なものではありません。ただ、そのしのぎの嘘をき殴っただけの、おを無するメモきでした。
田社は靴の裏のゴミでも見るようなたい目で、健を見ろしました。
「佐藤、お、取引先を騙して倒産した挙げ句、今は借取りに追われているそうだな。
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よくこんな神聖な所に棒のように入り込めたものだ」
その言葉に、周囲の招待客たちも斉にやかな線を向けました。
健が何よりも気にしていた世体が、今、彼を鋭い刃のように突き刺していました。
健は顔を真っ赤にして、必に言い訳を始めました。
「違います。全部、逃げた妻のせいなんです。あの女が俺の会社のを盗んで消えたせいで、俺はこんな目に遭っているんです。だから5000万円さえあれば、またやり直せるんです」
彼はこんな所でも、まだ自分の罪を私に押し付けようとしていました。
息を吐くように嘘をつき、自分だけは正しいと信じ込んでいる。
それが、私がした男の本当の姿でした。
しかし田社は騙されませんでした。酷な言を放ちます。
「見苦しい嘘をつくな。おが奥さんの印鑑を勝に偽造して利の借をしたことは、業界じゃ名な話だぞ。自分の嫁に責任をなすりつけるような最な屑に、誰が1円でもをすか」
その言が落ちた瞬、ホールの空気が完全に凍りつきました。
健は目を見き、をぱくぱくとさせて言葉を失いました。
自分の嘘が、すでに世にれ渡っている。
自分を信じてくれるは、もうこの世界のどこにもいない。
その事実を突きつけられ、健のからきのがぱらぱらとに落ちました。