"世田谷一家殺害事件:隠された真実" 第9話
その全ての根拠となっていたのは、犯が現に残した血液から検された、本には極めて稀な DNA 型だった。
それは科学という揺るぎない証拠として信じられていたはずだった。
だがその信頼が今、根底から覆されようとしていた。
真相を探る所は警庁の施設ではない。
都内にある学の先端 DNA 解析研究所の。
本では法備が追いつかず、公式捜査には導入できない最の遺伝子解析技術。
この技術は DNA 報からその物の祖先系統、ある程度の体特徴までを推定する禁断の技術だった。
黒田はのである研究所の教授に、あくまで学術研究という名目で、このの DNA データの再解析を非公式に依頼していた。
「結果がました」
教授は青いモニターのを顔に受けながら静かに告げた。
その声には科学者特の興奮と同に、困惑のが混じっていた。
黒田とは教授のろから息を殺して画面を覗き込む。
そこに表示された複雑なチャートと系統は、素目には何かの暗号にしか見えない。
「これは奇妙だ。実にパラドキシカルな結果と言えます」
教授は鏡を直し、画面の点を指さした。
「の当初の鑑定結果、母方が沿岸ヨーロッパ、父方がアジアという分析自体は決して違ってはいませんでした。
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この遺伝子マーカーがするのは事実です」
しかし、彼は言葉を切り、の顔をじっと見つめた。
「最の再解析で判したのは、この系の遺伝子マーカーが、現代のヨーロッパ集団のものとは微妙に、しかし決定に異なっているという点です」
「これは言うなれば遺伝子の化のようなもの。何世紀もにある特定の閉鎖集団にだけ受け継がれ、そのの種集団とほとんど交わることなく今まで保されてきた系統を示しています」
のには疑問が浮かぶだけだった。
話が専すぎて理解が追いつかない。
だが黒田の全には、まるでに打たれたような衝撃がっていた。
彼は教授の次の言葉を予していた。
「そしてこの化遺伝子が、統計に優位な準で検される本コミュニティが、国内にただつだけするのです」
教授がキーボードを叩くと、モニターに本図が映しされた。
州方の箇所が赤くハイライトされる。
「かつて戦国代から戸初期にかけて貿易で栄え、その厳しい弾圧の歴史を辿った隠れキリシタンの里としてられる域だった」
世紀から世紀、このにはくのポルトガルやスペイン宣教師、商が訪れ、元民とのに血の交流がまれました。
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その鎖国と弾圧によって、彼らの混血の子孫たちは何百もの部との交流を絶たれ、独自の共同体ので静かに暮らしてきた。
その結果、本の集団でありながら、いヨーロッパ、特定の代限定の遺伝子をまるでタイムカプセルのように保することになった。
「犯の DNA は、系国との混血ではなく、この極めて特殊な歴史を持つ本の共同体の者であることをく示唆しているのです」
その瞬、捜査本部のホワイトボードを埋め尽くしていた「国際犯罪」「国犯」の文字がガラガラと音をてて崩れ落ちていくのが見えた。
カリフォルニアの砂、フィリピン式軍隊格闘術、フランスの。
それら全てが、この先に特殊な遺伝子を最限に利用するため、犯が各からばらまいた然のミスディレクション、偽りのがかりだったのだ。
犯は自分の体に刻まれた、しく特殊な歴史の遺伝子を、捜査を欺くための最の武器として利用したのだ。
「この野郎……」
黒田のからりと戦慄が入り混じった声が漏れた。
信じられないほどの悪魔な性に対する嫌悪が全を駆け巡る。
震える声だった。
彼はというのみ、そしてすぐ元にあったはずの真実を見過ごしてきた自分自の愚かさに、奥歯をく噛みしめた。
その瞳には筋のい涙が滲んでいた。
それは悔し涙であり、同にようやく凶悪犯の尻尾を掴んだという堵の涙でもあった。