"柿の葉の封印" 第9話
葉がを止めたのは、古い井戸の脇だった。
その傍らには誰に気づかれることもなく、ひっそりと数体の蔵が並んでいる。
そのうちの体だけがらかによりもしかった。にさらされていない、っぽい肌のさな蔵。
その元にはごくさな文字で平成 5 と刻まれている。
その隣には平成 6 、そして平成 7 と、までのが刻まれた蔵が静かに佇んでいた。
そしてその列の最に、またしい体の蔵がちょこんと置かれていた。
おそらく昨夜、今朝の未に。今も無事やったんやな。
葉の声がらぐように震えていた。
その横顔はもはやの権力者ではなく、ただただくにいる族の無事を祈るの男の顔だった。
会うことは叶わない。言葉を交わすこともない。それでもこのさな蔵がつ増えるたび、彼らは確かにこの所に帰り、謝を伝え、そしてきている証を示していたのだ。
25 、誰にもられることなく続けられてきた、静かで何よりもい絆の交わしい。
その景をに、裕の目からは再び涙が溢れた。
それは失踪の謎が解けたという堵の涙ではない。
々が互いをいやり信じ、静かな祈りのに紡いできた見えない絆の美しさに対するの涙だった。
裕は自分もそっとをわせた。
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今どこかで暮らしているであろう族へ。そして彼らを守り続けたこの無な男へ。
から吹きろすが、まるで祝福のように彼の涙を優しく乾かしていった。
全てが解きかされ、裕のは議なほどの静けさと温かさで満たされていた。
だが、彼のの奥底でたったつだけ、どうしても消えないさな引っ掛かりが残っていた。
あの族写真に映り込んでいた、見らぬ男のの謎だけが、最に答えのない疑問として底にあり続けていた。
から吹くは、まるでの苦しみと葛藤を洗い流すかのように、裕のを静めていった。
失踪の真相、父の苦悩、そして宿敵であったはずの葉のい覚悟。全てをったは、議なほどのらぎと温かいに包まれていた。
もうこのにい残すことはない。
そうい、最の片付けを済ませていただった。箱から取りしたあの族写真を、何気なくもう度に取った。
その瞬、彼の考がぴたりと止まった。らぎに満たされたに、さな棘のようにあの黒いが突き刺さる。
葉の計画は完璧だった。捜査の目を欺き、を全に逃がす。
そのシナリオのに、この写真に映り込んだ謎の物のはあまりにも自然で、辻褄がわなかった。
葉にこののことを尋ねても、彼は当たりがないという顔で首をひねるばかりだった。
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父の融トラブルの相なら、こんなの庭にのんびり現れるはずがない。
ではこのは体誰なのか?それは解決したはずの物語に唯残された、穏な欠片だった。
このの正体を突き止めない限り、母・千子がじていたであろう恐怖や切なさの全てを、本当に理解したことにはならない。
裕は細やかな記憶の糸をたどり寄せた。母・千子の実。つまり自分の祖母はまだ隣町で健だったはずだ。母のことを最もよくる物。
裕は最の望みをかけて、祖母のを尋ねることにした。
昔ながらの並みが残る角にある祖母の。仏壇にをわせた、裕はおずおずとあの古い写真を取りす。
祖母は古いアルバムをゆっくりとめくりながら、いため息をついた。
この写真の千子は無理に笑ってますね。この頃あの子は随分とい詰めた顔をしていました。
祖母は写真の気なではなく、娘である千子の表に、母親だけが分かる痛みを読み取っていた。
正隆さんの変な話はから葉さんから聞きました。けどあの子を苦しめていたのは、それだけやなかったのかもしれん。
そして祖母のから語られたのは、裕が全くらなかった母の青代の物語だった。
千子には結婚する、くいった幼馴染みの男性がいたのだという。
彼は絵を描くのが好きな穏やかな青だったが体がく、も裕福ではなかったため、千子の両親、つまり祖母たちから交際を猛反対されていた。