"柿の葉の封印" 第7話
あれは子供を寝かしつけるためのではない。夜のに紛れ、誰かに向けて発せられた音の暗号。
父は表向きでは蜂さんの悪を言っていました。でも —— 苗の声に涙が滲んだ。
失踪のあった、父が夜にで仏壇ので泣いていたのを私は見てしまったんです。
父も本当は苦しんでいたんだといます。
威張って脅迫者に見えた葉がれず流した涙。
それは対するを追い詰めた男の涙ではない。の秩序とつの族の運命とので、たった苦悩し続けた父親の涙だったのかもしれない。
裕ので積みげてきた容疑者像が、ガラガラと音をてて崩れ落ちていく。
残されたのはたな、そしてよりい謎だった。
から響いた途切れ途切れの。あれは体誰に向けられたメッセージだったのか。
その異様な景は、裕のでバラバラだった謎のピースをつの方向へと導いていた。
あれは助けを求める母の最の祈りにも似たシグナルだったのではないか。
そしてそのシグナルを受け取るはずだった相は体誰だったのか。
裕のは吸い寄せられるように再び葉の敷へと向かっていた。
今度こそ真実を語らせる。そので彼は固く拳を握りしめていた。
再び訪ねたの葉の表は、回にも増して険しかった。
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しかし裕はもう彼の威圧に屈しなかった。
失踪の夜、倉の暗からが聞こえたそうです。必に何かを伝えようとするような声で。
裕は静かに、しかしはっきりと告げた。
あれは誰に向けた図だったんですか?あなたはあの夜どこにいたんですか?
その言葉を聞いた瞬、鉄仮面のような葉の表がわずかに崩れた。
鋭い目が驚きに見かれ、そして次の瞬には全てを諦めたかのようないため息を漏らした。
彼は裕に背を向け、庭に面した縁側にどっりと腰をろした。
苦しい沈黙がのに流れる。やがて庭の池、蹲に響くの音だけが静かにきく聞こえる。
静寂の、葉はぽつりぽつりと語り始めた。その声はもう裕を威嚇するものではなかった。
わしはあの、裏で息を殺して待っとった。あの声だけが図にな。
その言で裕のの血が逆流するような衝撃を受けた。
どういうことですか?
葉は裕の方を見ず、い目をして続けた。
わしは蜂を逃がした。
彼のから語られた真実は、裕が必に組みげてきた推理をこっぱみじんに破壊するものだった。
父・正隆がをした融トラブル。その相は単なる悪徳業者などではなかった。
当関円で勢力を拡していた反社会な組織だったのだ。
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正隆は彼らの巧妙な罠にはまり、の権利まで騙し取られ、だるま式に増えた借の返済を暴力に脅迫されていた。
子供の命までちらつかせられ、まさに追い詰められていたのだ。
その事実をわしは偶然った。
蜂との利権を争っていた葉は、彼らの畑のくを見回っている際、正隆が数の男に座させられ脅されている現を目撃してしまったのだという。
何も敵対してきた相、正直ざまあ見ろとわんこともなかった。
しかし男たちの苛烈な脅しと、恐怖に震える正隆の姿。そして彼のから漏れた「子供だけは」という懇願が葉のを揺さぶった。
このから子供の鳴をげるような事態だけは起こしてはならぬ。のとしての、いやのとしての良が、の憎しみを回った瞬だった。
その夜、葉は密かに正隆を呼びし、ただ言「逃げろ」と告げた。わしが助けする。
の宿敵からの申しに、正隆はただ呆然とし、やがて男泣きに泣き崩れたという。
神隠し騒はそのから始まった、葉夫妻による命がけの偽装作だった。
が突然消えたように見せるため、常が途切れた朝の景を演した。
捜査の目を欺き、捜査陣を混乱させるために、葉はあえてで蜂の悪評を流して回った。
「夜逃げだ」「に汚い」。
そうすることで自らが第容疑者であるかのように振るい、まさか自分が逃を助けしているとは誰にもわせないための周到な作戦だった。