"柿の葉の封印" 第5話
だとしたら体何を柿の葉に包んだのか。「真実」とは何だったのか。
裕ので葉だけが悪者という単純な構図が揺らぎ始め、物語はより複雑でしい様相を帯び始めていた。
茶の老婆が語った母の涙は裕のにくのしかかった。
「守る」という言葉の響きが、葉だけの悪で塗り固められていた事件の構図を根底から揺さぶる。
失踪はただ追われただけの劇ではない。
そこには族を守ろうとした母の、そしておそらくは父の切実ながしたのだ。
裕は実に戻り、再びあの物置きへと向かった。
箱のあった所以にも何か見落としはなかったか。
父・正隆に関連するものは何か残っていないか。
農具や古い雑誌が積まれたを、今度はより層注く調べていく。
そして埃をかぶった製の棚の引きしの奥から、数冊のノートを見つけした。
表には拙い文字で「農作業誌」とかれている。
父・正隆のものに違いなかった。
居に戻り、ページを枚枚めくっていく。
そこには温で実直だったと聞く父の柄が滲みるような詳細な記録が綴られていた。
当の気温、そのの作業内容、肥料の種類や作物の成記録。
には「今の柿は来が良いやろ」といった微笑ましい記述も見られた。
族をし真面目に農業に取り組む父親の姿がそこにはあった。
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しかし失踪した 1992 の頁へを取り、最初から読みめていった裕はページで指を止めた。
失踪の半、1991 のを境に、誌の内容が突如として変貌していたのだ。
それまでの穏やかな農作業の記録は跡形もなく消え、埋め尽くしていたのは別がいたかのように乱れた跡でき殴られた、無に見える数字の羅列だった。
10254.5
N225 2100 S300L
暗号だろうか、何かの計算式か。裕は首を傾げた。
文字の乱れからは父・正隆がじていた焦りや混乱が伝わってくる。
穏やかな農夫の仮面の裏に、これほどまでに追い詰められた状況があったとは。
彼はこの数字の羅列に、父のられざるもうつの顔を垣見た気がした。
裕は再び元駐の田所を尋ねた。
この謎を解くには、当の社会状況をる物の助けが必だとじたからだ。
数字の羅列を見せられた田所は眉にいシワを寄せ、虫鏡を取りしてノートのを凝した。
そしてしばらくして、「あ、これは」とめくように呟いた。
「おそらくですが融取引の記録ですな。普通の株取引やない」
田所の指が「N225」という文字列を指し示す。
「これは経平均株価のことです。そしてこの横の数字はおそらく価格や証拠の額」
「問題は平成の初め頃から素を相に流りした、ある種の悪質な取引やないかということです。
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どういうものかと言えば、将来の特定のにあらかじめ決められた価格で株を売買する権利を取引する、先物取引と呼ばれるものだった。
バブル経済が崩壊し、くの々がたな儲け話を探していた平成初期の混乱期。
識のない農や個事業主をターゲットに、『絶対に儲かる』と甘い言葉でこのハイリスクな取引に誘い込み、額の証拠を騙し取って莫な損失を追わせたりする業者が社会問題となり始めていた。
方の農が収穫の定さから解放されたいで、そのに落ちるケースもなくなかったという」
「正隆さんは真面目すぎたのかもしれん」田所はい目をして語った。
「候にされる農業だけやなく、定した収入源を確保してご族をさせたかったんやないでしょうか。それが裏目にてしまった」
裕は愕然とした。
誌の数字は父が刻んだ損失と取引の記録だったのだ。
攫千を見たわけではない。
ただ族をするがゆえに、守りたいがゆえに禁断の果実にをしてしまった。
ノートから浮かびがってきたのは、に目がくらんだ欲い男ではなく、器用なゆえにみにはまりもがき苦しむ父親の姿だった。
胸にどうしようもない切なさが込みげてくる。
父の背負った秘密のさをい、裕の目から静かに涙がこぼれ落ちた。