"柿の葉の封印" 第4話
の争い、での絶対な権力、そして失踪を「夜逃げ」と断定させたという横柄な振るい。
全てが彼を犯だと示していた。
りに駆られ、今すぐ葉の敷に乗り込みたいという衝に駆られる方、裕のの片隅ではあの穏なの言葉がたく響いていた。
「柿の葉に真実を包む」。
もし葉がを方に追い詰めたのなら、母・千子はなぜこのような謎めいた言葉を残したのか。
まるで誰かと示しわせたかのような秘密の図。
そのを解きかさない限り、本当の真実にはたどり着けない。
裕は荒れる気持ちを抑え、まずはこの言葉の謎を追うことに決めた。
桜井、そして奈良ので「柿の葉」といえば誰もが郷料理である柿の葉寿司をい浮かべる。
千子が、このくでしげく通っていたはなかったか。
田所に尋ねてみると、彼はし考えた、「あ、そういえば」と顔をげた。
「辺のの途にあるさな茶ですな。あそこのおばあさんの柿の葉寿司が絶品で、千子さんもよく通っておられましたわ」
裕は田所の教えを頼り、古代から続く本最古の、辺のへと向かった。
畳やのが入り混じり、端にはさな蔵や万葉集の碑が点している。
の両脇には実をつけ始めた柿のがどこまでも続き、が吹く度に葉の擦れう乾いた音がサワサワとを撫でた。
広告
古墳代からが歩いたであろうを、の匂いをじながらんでいく。
その静けさが裕のぶったをしずつ沈めていった。
やがて藁吹き根の古びた軒の茶が見えてきた。
簾に「田」と染め抜かれている。
を覗くと腰の曲がった老婆が、静かに番をしていた。
裕がに入ると老婆はゆっくりと顔をげ、「いらっしゃい」と声をかけた。
のには汁とほんのり酢の酸っぱいりが漂っている。
「柿の葉寿司をいただけますか?」裕がそう言うと、老婆はにっこり笑って奥へ入っていった。
しばらくして、青々とした柿の葉に美しく包まれた寿司が湯気のつお茶と共に運ばれてくる。
ほうじ茶の温かさが緊張した裕ののひらにじんわりと染み渡った。
「あの、しお伺いしたいのですが」
裕は箱から取りしてきた古い写真をテーブルのに置いた。
「この女性を覚えていらっしゃいませんか?」
老婆は写真に目を落とすときをぴたりと止めた。
シワだらけの顔が驚きに見かれ、やがてい昔を懐かしむような切なげな表へと変わっていく。
「ああ、蜂さんとこの奥さんやないか。忘れもしませんよ。あのがおらなくなる、ほんの数のことですわ」
老婆はゆっくりと語り始めた。
「その、千子さんはでここへ来られて、『申し訳ないけど所と具を貸してもらえないか』と。
広告
自分で炊いたというきな桶いっぱいの酢飯と塩で締めたサバを抱えて、何かただならぬ様子やった。
が終わった、わしは厨を貸したという。
千子は無言のまま枚枚丁寧に柿の葉とサバで寿司を包んでいった。
その付きはいつも通り美しく淀みがなかった。
しかしその横顔は蒼で、折りきな瞳からポロりポロりと涙がこぼれ落ちて、桶の酢飯のに吸い込まれていった。
『どうかしたんか』と声をかけても首を横に振るばかりで、ただ『これで事なもんを守れるんや』とそう呟いてな。
泣きながらそれでも必にをかす姿が今でも目に焼きついとるんです」
老婆は言葉を切り、の窓からくに見えるの稜線を眺めた。
「そして全部作り終えた、千子さんは先でじっとの方を見げてをわせてました。
まるで何かきなものに許しを請うようにすがるように。
あの姿は何かに追われて逃げるの姿やなかった。
事なもんを、その命をかけて守り抜こうとする母親の姿でしたわ」
老婆の話を聞き終えた裕の胸は激しく締めつけられた。
母の涙。
それは葉への恐怖やから追われることへの絶望から流されたものではなかった。
何か、誰かを守るための決の涙だったのだ。