"五度目のドタキャン弁当" 第6話
「いえ。そういうご事だったのですね」
そのだった。
「こんにちは」
聞き覚えのある声に、私の体が固まった。
最悪のタイミングで、トメがやってきたのだ。
「あら、お客さん?」
玄関先につ親子の顔を見た瞬、トメの表がぱっと輝いた。
「まあ、先じゃありませんか」
先と呼ばれたはるき君のお父さんは、軽く会釈をした。
「こんにちは」
トメは急に背筋を伸ばし、品そうな声をした。猫を100匹くらいかぶっている。
「まあまあ、こんなところで偶然ですわね。いつもお世話になっております」
私は状況をみ込めずにいた。
するとゆいが、声で教えてくれた。
「はるき君のパパね、病院の先なんだよ。3代目の院さんなんだって」
「そうなの?」
妙に腑に落ちた。柔らかい雰囲気と落ち着いた話し方は、病院の先だからかもしれない。
学のくに昔からあるその病院は、入院設備もある規模病院だった。数に院が代替わりしたらしい。域の顔として名な先だとは聞いていたが、まさか娘のクラスメイトの保護者だとはらなかった。
トメは目を輝かせた。
「先、今はどうされたんです?」
すると、はるき君が元気よく答えた。
「運会のお礼!」
「運会」
トメの笑顔が瞬凍りついた。
けれどすぐに持ち直し、私とゆいを見た。
「あ、あら、そうなの? 体何かしら。
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うちの嫁と孫がご迷惑をおかけしましたか? 本当に次男の嫁なもので来が悪くて」
私はうんざりして黙っていた。
するとトメは、ゆいのを力づくで押さえようとした。
「ほら、何してるの。ちゃんとをげなさい」
私はすぐにそのを払いのけた。
「やめてください」
トメは目を丸くしたが、すぐに顔を真っ赤にしてりした。
「志帆さん、あなたね」
その直、はるき君のお父さんがさく咳払いをした。
トメは慌てて表をえた。
「先、ご覧になりました? うちの嫁の反抗な目。本当にこの嫁は……」
はるき君のお父さんは呼吸置いてから、静かに尋ねた。
「どうして昨、お孫さんの運会に来なかったんですか?」
「え?」
「リレーで活躍だったそうですよ」
トメはらかに揺した。
「え、えっと、私はきたかったんですけど、男がどうしても来いって言うものですから、泣く泣く諦めたんですの」
そう言った、トメは持っていた袋を差しした。
「よかったらこのお産、先どうぞ」
「いえ、ゆいちゃんにあげてください」
「この子は別にいいんですよ。先、どうぞ」
はるき君のお父さんはのひらを正面に突きした。
「いりません」
元の微笑みすら消えていた。
トメは戸惑い、苦笑いを浮かべた。
「昨の分まで、お孫さんと過ごしてあげてください」
「え?」
その、ゆいが無邪気な笑顔で言った。
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「おばあちゃんが昨ドタキャンしたから、はるき君が助けてくれたんだよ。お礼言いなよ」
トメの顔が引きつった。
「ド、ドタキャンなんて、そんな言い方しなくても」
「本当のことでしょ」
「ゆいちゃん……」
「おばあちゃん、ドタキャンしすぎて軽く考えてない? ドタキャンはみんな困るんだよ」
「もう、ドタドタ言わないでほしいわ」
ゆいの追撃は容赦なかった。
トメはそれ以何も言えなくなった。
「お邪魔しました」
はるき君のお父さんの声で、私ははっとに返った。
「お礼はまた改めますね」
「いえいえ、そんな」
はるき君のお父さんはトメにも軽くをげた。
「残でしたね」
トメの肩がぴくりといた。
「お孫さん、とっても楽しみにしていたみたいなので」
そして、穏やかな声のまま言った。
「約束は守った方がいいですよ」
微笑んでいるように見えたが、その目には呆れと軽蔑が込められていた。
はるき君親子は何度もをげ、帰っていった。
「本当にありがとうございました」
「また学でね」
ゆいも嬉しそうにを振った。
玄関のドアが閉まった瞬、トメは鬼のような形相でこちらに詰め寄ってきた。
さっきまでの品なおばあ様モードは完全に消えていた。
「志帆さん!」
トメは顔を真っ赤にし、荒い息で私を睨みつけた。眉にはいしわが寄り、さっきまでの品な声はも形もない。
「私に恥をかかせて楽しいの? 先のでわざわざあんな話をするなんて嫌がらせよ」