"空っぽの珈琲サーバー" 第6話
けれど、盲目のピアニストとして演奏する達の画は、しずつ注目され始めた。
「このすごい」
「目が見えないのに、こんなに弾けるなんてした」
「音が優しい」
そんなコメントがつくようになった。
ある、ネットニュースに取りげられたことで、達の画は気に広まった。聴者数が急増し、チャンネル登録者も増えた。やがて収益も発するようになった。
「達、すごいじゃない」
私が言うと、達は照れ隠しのようにで笑った。
「まあ、昔取った杵柄だな」
信吾も嬉しそうだった。
「父さんがYouTuberだなんて、俺もがいよ」
その言葉に、達は気をよくしたようだった。
画で成功したことで、達のに余裕ができたのか、以のような刺々しさはしらいだ。
義母もデイサービスに通い始めた。デイサービスで話し相ができたことでストレスが減ったのか、以のようなわがままもなくなっていった。
私はようやく、ほんのしだけ精神な余裕をじるようになった。
「はあ……やっと私も落ち着けるわ」
そうった。
けれど、その穏やかさはく続かなかった。
達の習慣である昼のコーヒー。
そのたった1杯のはずのコーヒーが、私たち族を覆っていた嘘を暴くことになるのだった。
達は毎、昼にコーヒーをんでいた。
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になると、杖を頼りに台所へ向かい、コーヒーサーバーのにつ。豆の容器を探りでけ、決まった量を入れ、を注ぎ、スイッチを押す。
私はその姿を何度も見てきた。
目が見えなくても、のの順は覚えられるのだとっていた。
居に慣れるまでのも、達はコーヒーの準備だけはく覚えた。私はそれを、夫がしでも自しようとしている証拠だと受け止めていた。
だからこそ、あのの発言は自然だった。
「今のコーヒー、いつもと違うな。豆を変えた? にみがある」
達は確かにそう言った。
けれど、コーヒーサーバーは空だった。豆もなかった。
信吾が買い忘れていたからだ。
私は台所で空の豆容器をに取りながら、過の来事をい返していた。
実は、達への疑いは、その突然まれたものではなかった。
始まりは、信吾が撮った1本の画だった。
居へ引っ越してもない頃のことだ。
その、信吾は学からしく帰ってきた。私はパートでにおらず、義母はデイサービス、達は自にいるはずだった。
信吾は玄関を静かにけ、廊へ入った。
その、奥の部から音が聞こえたという。
最初は父が杖をついて歩いているのだとったらしい。けれど、音が違った。杖がを叩く音がしない。壁にをつく音もない。
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議にった信吾が廊の角からそっと覗くと、達が普通に歩いていた。
杖を持っていなかった。
壁にも触れていなかった。
まだ引っ越したばかりで、の配置に完全に慣れているはずもないのに、達は廊の曲がり角を迷いなく曲がり、に置かれた段ボールを避けて歩いていた。
信吾は息を止めた。
「え、父さんが普通に歩いてる……」
その瞬、父に見つかってはいけないと本能にじたらしい。
信吾は廊のにを隠し、スマートフォンを取りした。震えるで録画ボタンを押し、達の姿を撮した。
画のの達は、どこからどう見ても“目が見えない”のきではなかった。
ある夜、信吾は私にその画を見せた。
「お母さん、もしかしてお父さんの目、治ったの?」
私は洗濯物を畳むを止め、信吾のスマートフォンを覗き込んだ。
画面ので、達は何の迷いもなく廊を歩いていた。
「……そんな話は聞いていないけど」
私は声を抑えるので精杯だった。
「これ、どうう?」
信吾はそうに私を見た。
私は何度も画を見返した。杖がない。壁を探る様子もない。置いてある荷物を避けている。取りは確かだった。
「歩訓練かもしれない」
私は最初、そう自分に言い聞かせた。
けれど信吾は首を横に振った。
「父さん、俺たちのではこんなふうに歩かないよ。
いつも杖をついて、ゆっくり歩いてる」
信吾の言う通りだった。
そのを境に、私と信吾は達を注く見るようになった。