"空っぽの珈琲サーバー" 第3話
「お母さん、私がやりますから」
「のぞみさんばかりに悪いわ」
そう言いながらも、結局、瑞穂は私を頼るしかなかった。
私は信吾にも伝ってもらいながら、事と介護を回した。信吾はまだ幼かったが、祖母の膝掛けを直したり、落としたものを拾ったりしてくれた。
「信吾、ありがとうね」
私がそう言うと、信吾は照れたように笑った。
「別に。お母さん変そうだから」
その優しさが、私には何よりありがたかった。
そんな活が続いていたある夜のことだった。
玄関のでが止まる音がした。
私は夕飯の片付けをしていたを止め、廊へた。こんなに誰だろうとってドアをけると、そこにはタクシーが止まっていた。
部座席からりてきたのは達だった。
に痛々しく包帯を巻き、顔は青ざめ、体を支えるように運転に肩を借りていた。
「あなた、どうしたの?」
私は驚いて駆け寄った。
達は元を探るようにして玄関に入り、壁にをついた。いつもの気な態度は消え、声も々しかった。
「荒らしに襲われた」
「荒らし?」
私はわず聞き返した。
達は仕事帰り、駐で荒らしに遭遇したという。相は逃げようとし、揉みいになり、達はと顔のあたりをく殴られたらしい。
「警察には連絡したの?」
「ああ、もう連絡してある。
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だけど……病院で残なことを言われた」
達はリビングの子に腰をろした。包帯の隙から見える肌は青く、唇が乾いていた。
私はを持ってきて、そっとテーブルに置いた。
「病院で何て?」
「目の周りをくやられているらしい。球の周りにも良くない症状がているって」
「それはつまり、どういうことなの?」
自分の声が震えているのが分かった。
達はしばらく黙り、やがてい声で言った。
「医者から、残ながら俺の目には2度とが戻らないかもしれないと宣告された。実は今も、ほとんど周りが見えていないんだ」
その言葉を聞いた瞬、私は目のが暗くなった。
達はこのまま完全に失してしまうかもしれない。
夫はしそうに俯いていた。私はその姿に、何を言えばいいのか分からなかった。
「丈夫」とは言えなかった。
「きっと治る」とも言えなかった。
ただ、達のそばに座り、震えるを握ることしかできなかった。
そして、その恐れは現実になった。
病院で術や治療を受けたが、達の力は戻らなかった。何度も検査を受け、医師から説を聞き、しの希望を探したが、結果は変わらなかった。
達は仕事を辞めることになった。
私は計簿をに、いため息をついた。
信吾はまだ学。義母は子活。達は失し、収入は途絶えた。
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「仕方ないわね。夫の分まで、私が働いて稼がないと」
そのから、私はパートを3つに増やした。
朝はくからスーパーの品し。昼はの洗い。夕方からは清掃の仕事。
帰宅すれば、のような事が待っていた。洗濯、掃除、事の支度、義母の介助、達のの回りの確認。自分のために座るは、ほとんどなかった。
「のぞみさん、私の着替えはどこ? それとテレビが見たいんだけど、リモコンを取ってもらえない?」
「はい、分かりました」
「テレビを見終わったらお呂に入ろうかしら。そういえば私のシャンプーがなくなりそうだから買っておいてね。あとはおやつにたい焼きがべたいわ」
「分かりました。買っておきます」
返事をしながら、私は自分のが棒のようにくなっているのをじていた。
方で達は、定期に科へ通院するようになった。
普通なら面倒にじてもおかしくない通院を、達はなぜか待ちにしている様子だった。
「今は病院のだな」
朝から妙に嫌がいい。
私は最初、その理由が分からなかった。
やがて分かった。
達の担当医は、奈美という気の美女医だった。テレビにも演したことがあり、医療番組などで見かける名な医師だった。
目が見えない達には、相が美かどうかなど分からないはずだった。
それなのに達は、通院のになるとどこか浮きったような顔をした。
「テレビで奈美先のことはっていたけど、実際に会ってみるとテレビの印象よりいいだったよ。