"空っぽの珈琲サーバー" 第2話
驚かなかった。
ただ、ほんのしだけ線を落とした。
その反応を見て、私は確信した。
この子は、すでに何かに気づいている。
私の言葉で、これまで自分のに閉じ込めていた疑いが形になったのだろう。信吾は困ったように笑った。学らしい幼さと、びた諦めが混じった笑いだった。
そして、く答えた。
「オッケー」
その言に、私は胸が締め付けられた。
普通なら、父を残してをようと言われた子どもは戸惑うはずだ。理由を聞くはずだ。どうしてと泣くかもしれない。
けれど信吾は、聞かなかった。
その沈黙が、何よりも雄弁だった。
私は信吾の肩にそっとを置いた。
「、学から帰ったら必なものだけまとめて。きな荷物はあとで何とかするから」
「うん」
「おばあちゃんには、私から話すわ」
「分かった」
信吾は机ののゲームに目を落としたが、もうそれをに取ろうとはしなかった。
私は部をて、廊で度ち止まった。
リビングからは、達がテレビの音にわせて笑う声が聞こえていた。義母の瑞穂が、どこかでリモコンを探して私を呼ぶ声もした。
いつものだった。
けれど私のでは、もう何もかもが変わっていた。
私は静かに台所へ戻り、空っぽのコーヒーサーバーをもう度見た。
この空っぽのサーバーが、私に真実を教えてくれた。
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そして同に、私を決断させてくれた。
翌、私は夫を科へ送り届けたあと、迎えにはかない。
そう決めた。
私、望美は夫の達と結婚して15になる。
結婚した頃の達は、るくて話しなだった。自分勝なところはあったが、それでも庭を持てば落ち着くのだろうとっていた。息子の信吾がまれたには、達も本当にんでいた。
私はパートで働く普通の主婦だった。
計に余裕があったわけではないが、族3で穏やかに暮らしていければそれでいいとっていた。
けれど数、義母の瑞穂が事故の遺症で子活になったことで、活はきく変わった。
瑞穂はそれまで1で暮らしていたが、が自由になり、常活のくを自分だけでこなすことが難しくなった。そのため、私たち親子と同居することになった。
最初の頃、私はできるだけるく受け入れようとした。
「お母さん、困ったことがあったら言ってくださいね」
そう声をかけると、瑞穂は申し訳なさそうに頷いた。
「迷惑をかけるわね、のぞみさん」
その言葉を聞いた、私はしした。変にはなるだろうが、族で支ええば何とかなるとっていた。
けれど、子での活がくなるにつれ、瑞穂の苛ちはくなっていった。
うようにけないこと。
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に頼まなければならないこと。
自分の体が以と違うこと。
その満が、々の言葉に滲むようになった。
「のぞみさん、着替えはどこ?」
「はい、今持ってきます」
「テレビを見たいのに、リモコンがいわ。取ってちょうだい」
「分かりました」
「お呂は何に入れるの? くしてほしいんだけど」
「夕飯の支度が終わったらすぐにします」
私はできる限り応じた。
けれど瑞穂の求は細かく、際限がなかった。シャンプーがなくなりそうだ、のおやつはたい焼きがべたい、膝掛けがずれている、窓をしけてほしい、やっぱり寒いから閉めてほしい。
1つ終われば、また次の用事が待っていた。
特に実の息子である達に対して、瑞穂は厳しかった。慮のない母親らしい言い方で、達の逃げ腰な態度を何度も叱った。
「達、奥さんや子どもにばかり私の世話を押し付けるんじゃありません。のぞみさんだってパートで働いているんだからね」
リビングで聞を読んでいた達は、面倒そうに顔をげた。
「分かったよ」
「分かったじゃなくて、しはきなさい」
「俺は仕事もあるし忙しいんだ。だから望美、おがお袋の世話をしてやってくれ」
達はそう言って、いつも介護から逃げた。
瑞穂はその態度が面くないらしく、さらにきつく言った。
「あんたは昔からそう。
面倒なことはすぐ任せにする」
「うるさいな。仕事で疲れてるんだよ」
母と息子のやり取りが荒くなると、私は慌ててに入った。