"消えた暖房と姑の末路" 第1話
「お母さん、うちのエアコンがないんですけど、何したんですか?」
私がそう尋ねると、話の向こうで義母はしも悪びれずに笑った。
「あら、売ったのよ」
その声は、まるでいらない古雑誌を処分したとでも言うように軽かった。
私はスマホを握りしめたまま、壁を見げた。つい数まで、そこにはいエアコンが取り付けられていた。をつけようとリモコンを探し、見つからず、ふと顔をげた瞬、壁だけが自然に広く見えた。
配管の跡だけが残っている。
「売ったって……今、真ですよ。はマイナス3℃なんです」
私は震える声を抑えながら言った。
隣では、学の息子の良がそうに私を見げていた。買い物袋をまだ玄関に置いたまま、コートも脱げずにっている。
義母はで笑った。
「エアコンなんて、あなたには贅沢すぎるわ。寒いなら毛布にでもくるまってなさい」
「ちょっと、待ってください。良もいるんですよ」
私が言い終わるに、話は切れた。
無質な通話終の画面が、スマホに映っている。
私はしばらくその画面を見つめたままけなかった。ので、義母の言葉だけが何度も繰り返された。
エアコンなんて贅沢。
毛布にでもくるまっていろ。
こんな真に。
子どもがいるで。
「お母さん……寒い」
良のさな声で、私はに返った。
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慌てて買い物袋を置き、押し入れから毛布を引っ張りした。のものを2枚、いものをさらに2枚。カイロの箱も棚の奥から取りす。
「丈夫。今、かくするからね」
そう言いながらも、私の指先はたくかじかんでいた。
油ストーブもない。器具らしいものは、そのエアコンだけだった。気にれば取り戻せるかもしれない。そう考えて、私は良に毛布を巻きつけ、急いでへた。
けれど末の夕方だった。
所の気は、いつもよりくシャッターをろしていた。のにった、空から細かいが落ち始めた。
にわなかった。
私はたいに背を押されるようにしてへ戻った。
のは、とあまり変わらないほどえていた。良は毛布にくるまり、膝を抱えて座っていた。私はその隣に座り、カイロをけて彼のに握らせた。
「お母さん、丈夫?」
良が逆に私を配する。
その瞬、胸の奥で何かが燃えがった。
寒さのおかげか、だけは妙に静だった。
子どももいるのに、こんな嫌がらせをするなんて。
もう許さない。
がっていく気温とは反対に、私のりは静かにを持ち始めていた。
私はゆかり、32歳。
学の息子、良と、夫の公平と3で暮らしている。
学を卒業したあと、私はに就職した。配属されたのは方支で、私は窓事務を担当していた。
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慣れない仕事に毎緊張し、閉の計算がわないたびにや汗をかいていた。
公平と会ったのは、その支だった。
彼は融資係の先輩で、仕事がく、輩への面倒見もよかった。私が失敗して落ち込んでいると、いつも自然な調で声をかけてくれた。
「最初から全部できるなんていないよ」
そう言って、残業に相談に乗ってくれることもあった。
仕事終わりに緒に事へくことが増え、愚痴を聞いてもらううちに、私は公平に惹かれていった。公平も同じ気持ちだったようで、私たちはやがて恋になった。
付きって2、私たちは結婚した。
婚活は穏やかだった。
公平は仕事に真面目で、私はの仕事を続けながらのことも覚えていった。忙しい毎だったが、それでも2で暮らす活は楽しかった。
しばらくして、私は良をごもった。
妊娠が分かった、公平はからんでくれた。
「無理はしないで。体を番に考えて」
その言葉を聞いた、私は迷った末に退職を決めた。
せっかく入った職を辞めることに未練がなかったわけではない。続けられるなら続けたかった。けれど、産と育児をにして、庭を優先したいという気持ちがくなった。
良がまれてからの々は、像以に変だった。
夜泣き、授乳、寝、事。
公平は仕事があり、もあって育休は2週ほどしか取れなかった。