"田舎姑の一億円裁き" 第4話
その取引額は、健太やレナが像もできないほどの規模に達していた。
しかし、かよ子はそのことを切、息子に話したことがなかった。
それは彼女にとって自することではなく、き夫との約束を守るための当然の責務だったからだ。
社のな机に腰をろすと、かよ子は今の仕事の段取りを数分で終えた。
それから受話器を取り、1つの番号を押した。
相は、先代からの付きいである顧問弁護士、松田だった。
「もしもし。松田先でいらっしゃいますか。佐藤です」
話の向こうから、落ち着いた声が返ってくる。
「かよ子さん。息子さんのご結婚、おめでとうございます。さぞお幸せなことで」
その言葉に、かよ子の胸がちくりと痛んだ。
しかし、声はしも揺れなかった。
「ええ、ありがとうございます。それで先、しご相談したいことがございまして」
かよ子はを切排し、事務な調で依頼内容を告げた。
息子、健太の会社「ケンタテクノロジーズ」の経営状況。
そして、その妻であるレナの経歴。
それらを能な限り詳細に、そして極秘に調査してほしい。
話の向こうで、松田弁護士が息をのむ気配がした。
彼はくを問わなかった。
ただ言、静かに言った。
「承いたしました。何か、おありになったのですね」
「ええ。し、の理が必になりまして」
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かよ子はそう答え、さらに続けた。
「それから先、もう1つ。例の件、準備をお願いできますでしょうか」
「例の件と申しますと」
「私が保しております、いくつかの投資会社の件です。いつでもかせるように、流資産の確認と名義変更の準備を」
「かしこまりました。すぐに取りかかります」
松田弁護士の声には、隠しきれない緊張がにじんでいた。
彼だけが、かよ子の穏やかな母親という仮面のに隠された、もう1つの顔をっていた。
き夫から事業を引き継いだ、かよ子がその稀なる才覚で、の利益を元に巧みな資産運用をってきたこと。
その資産が、今やの商をはるかに回る巨なものになっていることも。
話を切ると、かよ子は窓のに広がる入れのき届いた庭を静かに眺めた。
そこには、夫がした古い松のが、変わらずに佇んでいた。
復讐の駒は、揃い始めている。
あとは、相がくのを待つだけだ。
見栄っ張りで野の息子と、傲で昇志向のい嫁。
彼らがの切れ目で醜い本性を現すは、そうくないはずだった。
そのこそ、自分が仕掛けた罠が音をてて作するなのだ。
かよ子の瞳は、獲物を待つ狩のようにたくっていた。
結婚式から季節が1つ巡った頃、かよ子の常は何も変わらなかった。
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朝はへき、職たちと仕事をし、夜は静かに1で過ごす。
ただ、松田弁護士からの調査報告は、すでに分いファイルとなって彼女の元に届いていた。
そこには、健太の会社の脆な財務状況、レナの派な遣い、そして彼らが抱える「見栄」という名のリスクが、数字とデータで克に記されていた。
すべては、かよ子の予測通りだった。
彼女はただ、嵐が来るのを静かに待っていた。
そのは突然やってきた。
でしい友禅の図案を見分していた、かよ子のスマートフォンがけたたましく鳴った。
画面に表示されたのは、「健太」の文字。
結婚式以来、事務な連絡以では初めての着信だった。
かよ子はしばらくそれを見つめ、やがてゆっくり通話ボタンを押した。
「もしもし。健太、どうかしたの?」
努めて穏やかな声で応じると、話の向こうから焦燥に満ちた息子の声がび込んできた。
「母さん、忙しいところごめん。実は変なことになったんだ」
健太の声はずり、らかにパニックを起こしていた。
かよ子は表ひとつ変えず、静かに先を促した。
「変なことって、何が?」
「会社の資繰りが急に悪化して、来の支払いがこのままだとショートしてしまうんだ。との取引が決まりかけていて、そのための先投資がんで……」
で語られる言い訳。
その内容は、松田弁護士のレポートにかれていた通りだった。
甘い事業拡。
の丈にわない設備投資。